■直観幾何学研究会(その2)

 私から見て印象に残ったことをいくつか記してみたい.数年前,当時京大におられた加藤直樹先生(現・関西学院大)の筋交い問題(bracing problem)のご講演を拝聴.以来,hard materialを使った場合の構築原理として,その講演内容を医学部の授業に取り入れている.

 生物の場合は石けん膜のようなsoft materialを用いて細胞の構築原理を考えることになる.両者は対極にあって,その対比がわかると,生物無生物に関わらず形の研究に取り組みやすくなるというのがその理由である.

===================================

 ハードマテリアルの場合,マクスウェルの必要条件:

  e≧2v−3  (2次元正方グリッド)

  e≧3v−6  (3次元立方グリッド)

  e≧nv−n(n+1)/2  (n次元立方グリッド)

から,m×nの2次元正方グリッドでは,最低でもm+n−1個の筋交いを最適配置に挿入しなければならない.最適配置判定は完全2部グラフKm,nによって簡単になされる.

 それではグリッドに凹凸があってしかも穴がH個あいている場合はどうなるだろうか? 穴の形も四角形とは限らないとする.

 その場合,全体をいくつかの四角形コンパートメントに分けて考えることになるであろうが,結論を先にいうと,必要な筋交い数はグリッドや穴の形に関わらず,

  上辺+左辺−1−2H

になるという.

 すなわち,

  v−e+f=2−2g

の離散版であるが,しかも,最適な筋交い配置も簡単なアルゴリズムとして書ける形になっているのである.

===================================

 ここまでが2次元正方グリッドの場合であるが,3次元立方グリッドの場合,面対角線を入れる,しかし,体対角線は入れないという条件で筋交い問題を拡張している.これは居住できる空間とするためには体対角線は邪魔であるという自然の要求に沿ったものである.

 さらに,立方体を平行多面体グリッドにも拡張することができるので,さらに拡張することができるが,高次元空間では平行多面体数が爆発(O(n^2!))するので,安易に手出しできないのである.

===================================