■射影幾何学における2つの定理(その5)

 (その2)では,拡張されたパスカルの円錐曲線定理を紹介した.直線2本でできた図形を2次曲線,直線3本でできた図形を3次曲線とすると,この定理を適用することができる.

 そのため,パスカルの拡張形定理は楕円曲線:y^2=x^3+ax+b  (4a^3+27b^2≠0)の結合法則をも保証するものであって,その意味では楕円曲線論,代数曲線論,さらにはコンパクト複素多様体における基本定理の原型となる重要な定理となっていて,アーベルの定理やリーマン・ロッホの定理を介して,代数幾何学の重要な定理と深く関わっている.

 今回のコラムでは(その3)を補完しておきたい.

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【1】射影変換

 射影変換

  x’=(ax+by+c)/(ux+vy+w)

  y’=(dx+ey+f)/(ux+vy+w)

によって,2点間の距離や2直線の角度は保たれないが,直線は直線に,2次曲線は2次曲線に変換され,直線が2次曲線に接している状況は保存される.

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【2】楕円曲線の不変量

 楕円曲線は

  C:a1x^3+a2y^3+a3xy^2+a4x^2y+a5x^2+a6y^2+a7xy+ax8+a9y+a10=0

は(複素)射影変換によって,ルジャンドル標準形

  E:y^3=(x−α1)(x−α2)(x−α3)

に変換される.

 E上にある無限遠点(楕円曲線の弓の部分の上下の極限が無限遠で繋がっていると考える)から,Eに4本の接線

  x=α1,x=α2,x=α3,x=∞

が引ける.このとき,これらと直線y=0との交点α1,α2,α3,∞の非調和比

  λ=(α1−α2)(α3−∞)/(α1−α3)(α2−∞)

   =(α1−α2)/(α1−α3)

が定まる.

 このことをCに移して考えると,Cの変曲点のひとつからCに4本の接線が引ける(このうちの1本は変曲点における接線であり,ほかに3本の接線が得られる).この3つの接線の接点α'1,α'2,α'3を結ぶ直線L’が定まる.L’は変曲点での接線との交点∞’をもち,これらL’上の4点の座標から定まる非調和比は最初のλと一致する不変量なのである.(したがって,2つの楕円曲線は射影変換で移り合うなら,両者のλは一致する.)

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