■オイラーの多面体定理から(その2)
オイラーの定理が物理的作用と結びつくと,興味のある幾何学的効果が出現してきます.たとえば,2次元的にランダムに配列した石鹸の泡はいろいろなサイズの泡細胞からなっていますが,表面張力の要請から境界長を極小化しようとしますから,接合角度は120度となります(プラトー問題・最小シュタイナー木問題).このことから,石鹸の泡は各頂点の次数がすべて3である平面図形と考えることができます.また,互いに120°の角度で交わる石鹸膜の交線は
arccos(−1/3)=109.471°
で接触します.正四面体の頂点から中心に向かう3枚の膜は互いに120°の角度をなし,中心に集まる4本の線は109.471°(マラルディの角)をなすのです.
このように,120°と109.471°は石鹸膜が接触するときの基本的な角度ですが,コクセターは1つの泡に接する泡の数を
(23+√313)/3=13.56
と計算し,そのアイデアを日記に記しています.
これは2次方程式
3x^2−46x+72=0
の解となっていることが見てとれますが,どのようにして導出されたものなのでしょうか?
(A)4次元正多胞体はシュレーフリ記号{p,q,r}・・・各頂点にp角形がq面集まる多面体が各辺にr個集まる・・・で表記されるとします.
[参]コクセターの「最密充填と泡」に関する論文
Coxeter: Close packing and froth, Illinois Journal of Mathematics 2, 746-758 (1958)
によると,p,q,rに関する不等式
1/p+1/q>1/2 (p,q≧3)
1/q+1/r>1/2 (q,r≧3)
に有限群であるという条件が付加されると,さらに2次不等式
p−4/p+2q+r−4/r<12
p−4/p<12−2q−r+4/r
p^2−(12−2q−r+4/r)p−4<0
が得られます.
泡細胞の合胞体の場合,1個の頂点に3個の辺が集まり,1本の辺の周りに3個の泡細胞が合するというのが空間分割の局所条件ですから,q=r=3とおくと
p^2−(13/3)p−4<0
p<(13+√313)/6=5.1153
これを
f=12/(6−p)
v=4p/(6−p)
e=6p/(6−p)
に代入すると
f=(23+√313)/3=13.564
v=2(17+√313)/3=23.128
e=17+√313=34.692
になるというわけです.
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