離散コーシー分布
f(x)=C・1/(1+n^2) (−∞<n<∞)
について考えてみますが,
Σ(-∞,∞)1/(1+n^2)
=π(1+exp(−2π))/(1−exp(−2π))
=π/tanh(π)
より,
C=tanh(π)/π
となります.すなわち,連続コーシー分布の1/πがtanh(π)/πに変わった形をしているというわけです.
Σ(-∞,∞)1/(1+n^2)=π/tanh(π)
や
Σ(-∞,∞)1/(n+α)^2=π^2/(sin(πa))^2
α=1/2→ Σ(-∞,∞)1/(n+1/2)^2=π^2=6ζ(2)
はパーセバルの等式の応用として得られる公式で,とくに
Σ(-∞,∞)1/(1+n^2)=π/tanh(π)
Σ(-∞,∞)(−1)^n/(1+n^2)=π/sinh(π)
Σ(-∞,∞)1/(1+n^2)^2=π/2(exp(4π)+4πexp(2π)−1)/(exp(2π)−1)^2
は,
Σ(1,∞)1/n^2=π^2/6=ζ(2)
Σ(1,∞)1/n^4=π^4/90=ζ(4)
のようにゼータ関数の値を直接表すものではありませんが,同様の世界に属していて,ζの香りが漂っているように思われるとコメントされています.
[参]加藤和也・黒川信重・斉藤毅「数論T,Fermatの夢と類体論」岩波書店
この結果をさらに一般化すると
Σ(-∞,∞)1/((α/2π)^2+n^2)=π(2π/α)/tanh(α/2)
α=2π→Σ(-∞,∞)1/(1+n^2)=π/tanh(π)
α=π→ Σ(-∞,∞)1/(1/4+n^2)=2π/tanh(π/2)
を得ることができます.これらは双曲正接関数との変換式になっているというわけです.
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【1】これまでのおさらいから
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page175.htm
において,杉岡幹生氏は一般に
Σ(1,∞)1/n^k(1+n^2)
はkが偶数のとき明示的に求められるが,奇数のときは関数を閉じた形に表せないだろうと述べている.
また,
Σ(1,∞)1/n^k(1+n^2)
の変数nを奇数だけにすると
Σ(1,∞)1/(2n−1)^k(1+(2n−1)^2)は
となるが,
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page183.htm
では
Σ(1,∞)1/(2n−1)^k(1+(2n−1)^2)
はkが偶数のとき明示的に求められるが,奇数のときは関数を閉じた形に表せないだろうと述べている.すなわち,ζの奇偶性に対応することを主張しているのである.
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【2】その後の進展
杉岡氏は,その後
Σ(1,∞)(-1)^(n-1)(2n−1)/(1+(2n−1)^2)=π/2・sinh(π/2)/sinh(π)
Σ(1,∞)(-1)^(n-1)/(1+(3n)^2)=1/2−π/3・{exp(π)+exp(π/3)+exa(5π/3)}/{exp(2π)−1}
など,多数の不思議な公式を導出しています.その導出法については
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page197.htm
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page198.htm
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page199.htm
などをご覧ください.
既存の公式からは導出しにくい公式と思われたので,分厚い公式集
Gradshteryn, Ryzhik "Table of integrals, series and products", Academic press
新数学公式集,丸善
などを調べてみたのですが,ここにに掲げたような公式を探し出すことはできませんでした.解析家・杉岡の面目躍如といったところです.
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