■高次元結晶と通信理論(その49)
(その44)の続き.
石井源久「多次元半正多胞体のソリッドモデリングに関する研究」
を読んで,私は高次元多面体論の研究を始めた.当初は頂点座標を求めて計量的に多面体の構造を詳しく調べていた.図形の問題ではどうしても座標を設定して計算したくなるものであるが,面数を数えるだけならば座標にこだわらず扱えると考えて,最終的には座標を使わずに位相幾何学的な組み合わせ論を用いた.
初歩的・古典的な位相幾何学的組み合わせ論が不思議なほどにうまく使えて,多面体の構造を詳しく調べていくのは(困難がなかったわけではないが)実に楽しいものであった.
こういうときの心境は,漱石の「夢十夜」の運慶が仁王を刻む話と同様,実は私が考え出したのではなく,数学という木のなかの埋もれていた理論を,シュレーフリ記号とワイソフ記号,そして紙と鉛筆を使って掘り出したに過ぎないというのが実感である.
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