■ピタゴラスの定理と・・・(その3)
【1】アイゼンシュタイン三角形
ピタゴラス三角形とよく似た三角形に三辺の長さが整数であって,二辺a,bのあいだの角が120°である鈍角三角形があります.一松信先生はこの三角形をアイゼンシュタイン三角形と呼んでいますが,この三角形はピタゴラスの定理の拡張である余弦定理c^2=a^2+b^2−2ab・cosCより,
a^2+ab+b^2=c^2
を満たします.
この一般解は
a=k(m^2−n^2),b=k(2mn+n^2),c=k(m^2+mn+n^2)
と表現でき,(a,b,c)=(3,5,7),(7,8,13),(5,16,19),・・・など無限に存在します.
a/c=x,b/c=yとおくと,ピタゴラス三角形は円x^2+y^2=1に,アイゼンシュタイン三角形は楕円x^2+xy+y^2=1になります.この楕円上のすべての有理点は,
x=(1−t^2)/(1+t+t^2),y=(2t+t^2)/(1+t+t^2)
とパラメトライズされます.
なお,ディオファントスはa^2+ab+b^2=c^2を満たすa,b,cをとり,(m,n)=(c,a),(c,b),(c,a+b)の三組からは同一面積(a+b)abcの直角三角形ができることを示しています.
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【2】アイゼンシュタイン三角形の生成行列
[−3,−4,4]
Q=[−4,−3,4]
[−6,−6,7]
とし,第1象限上のベクトル(a,b,c)’に対して,第2象限上のベクトルA=(−a,a+b,c)’,B=(−a−b,a,c)’,第3象限上のベクトルC=(−b,−a,c)’,第4象限上のベクトルD=(b,−a−b,c)’,E=(a+b,−b,c)’とおくと,QA,QB,QC,QD,QEはすべてアイゼンシュタイン三角形になります.
この行列も
Q^-1=Q,|Q|=−1
を満たします.なお,この変換の裏にも
[m’]=[1,−2][m]
[n’] [0,−1][n]
が潜んでいます.
ピタゴラス三角形の場合,先祖は(3,4,5)だけでしたが,アイゼンシュタイン三角形の先祖は(3,5,7)と(8,7,13)の2組あり,2組の先祖からアイゼンシュタイン三角形が網羅されます.
なお,ここでは計算方法だけを紹介しましたが,これらの行列P,Qが出てくる舞台裏に隠されている数学的な本質については
[参]小林吹代「ピタゴラス数を生み出す行列のはなし」ベレ出版
に詳細があります.この金鉱脈について知りたい方はぜひ購読(お買い上げのうえ読破)されるとよいでしょう.
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