金原博昭さんが次に考えた問題は,5角24面体の黄金化(5角60面体の黄金5角形で5角24面体の展開図を作成し各面が3分割されるように組み立てる)と5角60面体の白銀化(5角24面体の白銀5角形で5角60面体の展開図を作成し各面が3分割されるように組み立てる)です.
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【1】オイラーの問題
凸多角形(n+2角形)に対角線を描いて,それをいくつかの凸多角形に分けるのではなく,対角線を互いに交わらないように引いて三角形分割する問題を考えよう.
[Q]凸n+2角形に互いに交わらないn−1本の対角線を引いて三角形分割する仕方の数c(n)は?
[A]この問題はオイラーが提起した幾何学問題である(オイラーの問題).4角形では2通り,5角形では5通りあることは数えられても,6角形ではそう簡単にはいかない.
6角形の場合,たとえばある対角線を引いて3角形と5角形,4角形と4角形,5角形と3角形に分割することができるが,そのような分割の仕方を場合分けすることで,積和型の漸化式
c(n+1)=c(0)c(n)+c(1)c(n−1)+・・・+c(n)c(0)
が得られる.ただし,c(0)=c(1)=1とする.
これはカタラン数の漸化式であって,カタラン数c(n)はnの増加に応じて急激に増加する.
c(0)=1,c(1)=1,c(2)=2,c(3)=5,
c(4)=14,c(5)=42,c(6)=132,
c(7)=429,c(8)=1430,c(9)=4862,・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
カタラン数の一般項は
c(n)=2nCn/(n+1)=(2n)!/(n+1)!n!
であるが,この公式は母関数を用いると簡明に得ることができる.
カタラン数の母関数を
C(x)=c(0)+c(1)x+c(2)x^2+・・・+c(n)x^n+・・・
とおく.これを2乗すると
C(x)^2=c(0)c(0)+(c(0)c(1)+c(1)c(0))x+ (c(0)c(2)+c(1)c(1)+c(2)c(0))x^2+・・・
ここで,
c(0)c(0)=c(1)
c(0)c(1)+c(1)c(0)=c(2)
c(0)c(2)+c(1)c(1)+c(2)c(0)=c(3)
であるから,
C(x)^2=c(1)+c(2)x+ c(3)x^2+・・・
次数を揃えるために,両辺にxをかけて
xC(x)^2=c(1)x+c(2)x^2+ c(3)x^3+・・・
xC(x)^2=C(x)−c(0)=C(x)−1
C(x)に関する2次方程式を解いて,母関数は
C(x)={1−(1−4x)^1/2}/2x
ここでニュートンの二項展開により,一般項
c(n)=2nCn/(n+1)=(2n)!/(n+1)!n!
が得られる.
なお,凸n角形を対角線で三角形分割する仕方は何通りあるかという問題は,回転や反転で同型になるものを同じと数えると,
1,1,1,3,4,12,27,82,228,733,2282,7528,・・・
となることを付記しておく.
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【2】カタラン数
カタラン数
{Cn}={1,2,5,14,42,132,429,1430,4862,16796,・・・}
は,凸n角形を対角線で三角形分割する仕方は何通りあるかとか,n対のかみ合い括弧の種類数などいろいろな場面で登場する数なのですが,
Cn=2nCn/(n+1)=(2n)!/n!(n+1)!,
Cn=2n+1Cn/(2n+1),
あるいは
Cn=2nCn−2nCn-1=1,2,5,14,42,・・・
と表されます.
カタラン数から一般項が何かを予想するのは難しいのですが,ここでは
Cn=2nCn/(n+1) (C0=1)
がわかっているものとして,母関数
F(t)=ΣCnt^n
を求めてみます.
この級数は,第0項:C0=1から始まるので,そのまま項比をとると
an+1xn+1/anxn=(n+1/2)(n+1)/(n+2)*4x/(n+1)
したがって,
F(x)=2F1(1/2,1,2,4x)=2/{1+(1-4x)^(1/2)}
={1-(1-4x)^(1/2)}/2x
(1-4x)^(1/2)=Σ(-4)^k1/2Ck・x^k
より
Cn=-1/2(-4)^(n+1)1/2C(n+1)
これをさらに式変形すれば,
Cn=2nCn/(n+1)
になる.この結果,二項展開を丹念に使えば
{1-(1-4x)^(1/2)}/2x=Σ2nCnx^n/(n+1)
が得られるはず・・・.
この方法は試してはいないのですが,かなり面倒そうです.実はカタラン数に対しては,漸化式
Cn=ΣCkCn-k-1=C0Cn-1+C1Cn-2+・・・+Cn-1C0
が成り立つので,母関数は
F(t)=ΣCnt^n=ΣCkt^kΣCn-k-1t^n-k+1
=F(t)・tF(t)+1
すなわち,
tF(t)^2−F(t)−1=0
なる2次方程式を満たすことが知られています.
C0=1を満足させなければならないので,複号は負号をとると,
F(t)={1-(1-4x)^(1/2)}/2x
がでてきます.
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【3】5角24面体の黄金化と5角60面体の白銀化
左右対称な凸5角形を三角形分割する仕方は何通りあるかというと,回転や反転で同型になるものを同じと数えると,
(1)頂角から2本の対角線を引く
(2)底角から2本の対角線を引く
(3)その中間の頂点から2本の対角線を引く
の3通りあります.(2),(3)では分割してできる3つの三角形がすべて異なりますが,(1)では二等辺三角形と1対の不等辺三角形になります.
金原さんは3通りすべてについて実際に模型を作って検討されておられます.その結果,閉じた多面体となったのは
5角24面体の黄金化 5角60面体の白銀化
(1) ○ ○
(2) ○ ○
(3) ○ ×
で,(3)では黄金化のみが可能だったそうです.
これらすべての場合について二面角を検討するのはかなり大変な作業になりますから,次回以降は(1)の場合について調べてみたいと思います.
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