「ねじれ立方体」「ねじれ12面体」の存在は他の準正多面体よりも初等的でない.それは正多面体にどんな簡単な操作を施しても構成できないし,左手系と右手系があるという意味でも他のアルキメデス立体とは異なっているからである.
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【1】ねじれ準正多面体の計量
ねじれ立方体の構成する方法を考えてみよう.原点を中心とする辺の長さ2の立方体の各面に頂点(+/-a,+/-b)(+/-b,-/+a)の傾いた正方形があり,立方体の外から眺めたときつねに同じ向きになるように置く.したがって,傾いた正方形の頂点の座標は(a,b,1)などとなる.
傾いた正方形の頂点を線で結ぶと,6個の正方形と32個の三角形面よりなる図形が得られる.この,a,bについての方程式は3次方程式になり,定規とコンパスで作図可能ではないが,この方程式を解くことでねじれ立方体を構成することができる.
しかし,原点を中心とする辺の長さ2の立方体から,ねじれ12面体を構成する方法は一層難しくなる.当初はねじれ立方体に対して各頂点の座標を計算したのだが,ねじれ12面体についての座標計算は大変複雑になったことで座標を用いない方法を採ることにした.
ねじれ準正多面体のもとになる立体は(p,3)である.立方体のときp=4,正十二面体のときp=5となる.
[参]一松信「正多面体を解く」東海大学出版会
にしたがって,もとになる立体の1辺の長さをa,切稜パラメータをx,切頂パラメータをyとおくと,2p角形面と4角形面に挟まれる辺の長さは
b=a+2xcos(2π/p)−2x−2y
2p角形面と6角形面に挟まれる辺の長さは
c=2ycos(π/p)
4角形面と6角形面に挟まれる辺の長さは
d=2xcos(π/p)
で与えられる.
さらにこのことから,2p角形面の対角線の長さの2乗は
f(x,y)=b^2+c^2-2bccos(π(p-1)/p))・・・・・(1)
4角形面の対角線の長さの2乗は
g(x,y)=b^2+d^2・・・・・(2)
6角形面の対角線の長さの2乗は
h(x,y)=c^2+d^2+cd・・・・・(3)
で表される(余弦定理).
こうして(1)=(2)=(3)となるx,yを求める問題は4次方程式に帰着することが理解される.a=2とおいて実際に計算すると,
立方体 正十二面体
切稜パラメータx 0.456311 0.520868
切頂パラメータy 0.248091 0.268053
となった.
また,2p角形面間距離を1とおいた場合の各面間距離やもとの正多面体とねじれ準正多面体の1辺の長さの比は
四角形面間距離 1.09155 1.05863
六角形面間距離 1.06191 1.04855
2p角形面間距離 1 1
1辺の長さの比 0.437593 0.562122
と計算された.
なお,p=3の場合
x=(3−√5)/2=0.381966
y=−2+√5=0.2362068
が得られたことを付記しておく.
中川宏さんが最近製作された木工多面体30セットのなかの「ねじれ12面体」の写真を掲げる.この型の準正多面体にはねじれる方向によって右手系と左手系がある.平行な対面をもたない面があり,大変作りにくい立体であることがおわかりいただけるであろう.
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[補]もとになる立体の1辺の長さをa,切稜パラメータをx,切頂パラメータをyとおくと,
(1)2p角形面と4角形面に挟まれる辺の長さは
b=a+2xcos(2π/p)−2x−2y
(2)2p角形面と2q角形面に挟まれる辺の長さは
c=2ycos(π/p)
(3)4角形面と2q角形面に挟まれる辺の長さは
d=2xcos(π/p)
で与えられます.
また,正多面体のある頂点から隣接する頂点までの距離のどのくらいを切稜,切頂するのか,その切稜率をs,切頂率をtとおくと
sa=x,ta=2x+y (0≦s≦0.5,0≦t≦1)
ですから
x=sa,y=(t−2s)a
[3,3,3,3,p]のねじれ型のための計算をx,yからs,tにリパラメトライズしてやり直すならば,
(4)2p角形面の対角線の長さの2乗
b^2+c^2-2bccos(π(p-1)/p))
=a^2{(1+2scos(2π/p)+2s-2t)^2+(2(t-2s)cos(π/p))^2-2(1+2scos(2π/p)(2(t-2s)cos(π/p))cos(π(p-1)/p))}
(5)4角形面の対角線の長さの2乗
b^2+d^2=a^2{(1+2scos(2π/p)+2s-2t)^2+(2scos(π/p))^2}
(6)6角形面の対角線の長さの2乗
c^2+d^2+cd
=a^2{(2(t-2s)cos(π/p))^2+(2scos(π/p))^2+2(t-2s)cos(π/p)2scos(π/p)}
より(4)=(5)=(6)となるs,tを求めます.
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【2】まとめ
「ねじれ立方体」「ねじれ12面体」には平行な対面をもたない面があり,大変作りにくい立体です.ここで示した方法は,ねじれ準正多面体では3次元定規を使わない工程とするために中間的に2p角形,6角形,4角形からなる多面体[4,6,2p]を作り,それを切って[3,3,3,3,p]を仕上げるもので,この着想は正解と思います.
すなわち,変形[4,6,2p]を中間産物として最終的にねじれ立方体[3,3,3,3,p]にたどりつくという着想ですが,大菱形立方8面体からはねじれ立方体,大菱形12・20面体からはねじれ12面体が得られます.
なお,正四面体に切稜切頂操作を加えると切頂八面体[4,6,6]の変形立体ができますが,各面の対角線の長さを等しくした変形立体からは[3,3,3,3,3]すなわち正二十面体が得られます.ねじれ4面体を作ろうと思ってもよく知られた多面体となってしまい,この意味でのねじれ4面体は存在しないのです.
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