■ウィア・フェラン泡(その22)
極小曲面の構成方法はいろいろありうるので,ad hoc です.ただ一度解らしきものを見つけたら数学者なら極小にしたくなるものです.その付近に正解がありそうなわけですから・・・
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【1】鍛冶屋のふいご
これまで知られているすべての変形する多面体は体積が一定であったので,折り曲げ可能多面体の体積はその折り曲げ過程で変化しないと予想されました.この予想は「鍛冶屋のふいご予想」と名付けられました.ふいごから風はでない=多面体は曲げられるが呼吸はしないというこの仮説は1977年から1978年にかけて何人かの数学者によって定式化されたのですが,ほぼ20年の間,証明も反証も成功しませんでした.
そして,1997年,コネリー,ワルツ,サビトフらによってヘロンの公式の多面体の体積への拡張により証明されています.
三角形は3辺の長さa,b,cが与えられれば一意に決まりますから,当然面積も決まり,面積はa,b,cで表されるというのがヘロンの公式ですが,残念なことに四角形以上ではこのような公式はありえません.たとえば,すべての辺の長さが1の四角形の面積は0〜1の任意の値をとることができます.四面体もの場合は6辺の長さを与えると(それが存在するなら)決まりますから,体積を与える公式もあり,オイラーによって与えられています.面の形が三角形でないならこの種の公式はあり得ません.
そこで,すべての面を三角形であるとして,辺の長さだけで表現できる体積公式はあるでしょうか? サビトフらはこのような公式(多項式)が存在することを証明したのです.それらは公式というよりはある代数方程式の根として得られます.折り曲げ可能な多面体の辺の長さは一定なので,多項式も固定されている.したがって,この多面体の体積はある根から別の根にジャンプすることによって離散的にしか変化できないが,体積は連続的にしか変化できないので体積は一定のままでなければならないというわけです.
平面三角形の面積,四面体の体積ではΔ^2を含む多項式が現れましたが,さらに複雑な立体にはますます高次の累乗が必要になり,たとえば,三角八面体の体積の公式にはΔ^16が含まれています.この多項式は三角八面体に対してさえも16次になり,これ以上面の数が増えると次数は急速に大きくなります.
なお,これまでのところ高次元の折り曲げ可能多面体に対するふいご予想は証明されていません.
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【2】ふいご予想の証明(補足)
すべての面を三角形であるとして,辺の長さによる体積公式が存在することが証明されています.それらは公式というよりはある代数方程式の根として得られます.多項式はいくつかの異なる解をもちますから,ひとつの解からもう一つの解へと一瞬に体積をかえることができますが,折り曲げに際して多面体は連続的に変形されるので,体積もまた変形のパラメータの連続関数にならなければなりません.しかし,有限個の値しか取らない連続関数は定数でなければならず,体積がいきなり別の値になることはないのです.
かくして,ふいご予想すなわち折り曲げ可能多面体が面の形を変えずに変形しても体積は変わらないことが証明されています(1997年,コネリー,ワルツ,サビトフ).形状の変わる折り曲げ可能多面体では体積は変化しないのでふいごは風を送れない,ふいごとして使えないという定理が成り立つというわけです.
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