■ウィア・フェラン泡(その19)
[Q]f=14の場合,ケルビンの14面体が等周比最小となるのだろうか?
[A]面数を固定した場合,極小図形の頂点集合は定められた球面上にあってToth の不等式を満たす。この不等式が等式になる正四面体,立方体,正十二面体は最小問題の解答となるが,それ以外は今のところ不明.
[Q]ウィア・フェランの極小曲面の頂点は厳密に計算されているでしょうか.いいかえると長さや角度が整数係数の方程式の根として表され,かつ,体積保存変形に関して表面積が極小であることが示されているのでしょうか.(最小性は未解決と思いますが,極小性は示しておきたいところです.)
[A]過去の論文を見た範囲では,極小な多面体近似の座標をきちんと決めていないようです.なお,極小曲面の決定はかなりハードです.
以下に,頂点座標を決められる場合の例題をあげておきます.→コラム「スフェリコン」参照
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(正三角形でなく)二等辺三角形(頂角t)からできている面数4nの双子の多面体の場合,
(1)n=5,t=59°→一方の重五角錘を完全に押しつぶすことができる
(2)n=3,t=107°36′→3種類の安定した形状をとる
(3)n=3,t>103°+α→3種類の安定した形状をとる
という結果が与えられている.
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【1】重n角錐の高さ
まず,二等辺三角形(頂角t)の底辺の長さをb,等辺の長さを1とすると,
b=2sin(t/2)
次に,重n角錐の高さhを求めてみることにする.
b/(4−b^2−h^2)^(1/2)=tan(π/n)
より
h^2=−b^2+(4−b^2)tan^2(π/n)
となる.
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【2】重n角錐の開口関数
重n角錐に1本の切れ込みを入れると,口の開いた重四角錐が得られる.一方の開口重四角錐の高さhから開口の大きさwを求めると,
w=f(h)=(4−h^2)^1/2sin(4arctanb(4−b^2−h^2)^-1/2)
これは他方の開口重四角錐の高さとなるから,
h=g(w)=(4−w^2)^1/2sin(4arctanb(4−b^2−w^2)^-1/2)
ここで,2つの開口重n角錐が歪みなしに接合できるための条件は
h=g(f(h))
h:0〜(−b^2+(4−b^2)tan^2(π/n))^1/2
である.
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【3】プログラムによる検証
w=f(h)=(4−h^2)^1/2sin(4arctanb(4−b^2−h^2)^-1/2)
とおいて,y=x,y=g(f(x))の交点を求めてみよう.グラフを描いてみるまでもなく,以下のような簡単なプログラムで,n=3,t:約103.5°〜107.5°のとき,交点が3箇所あることがわかる.
1000 PI=3.14159
1010 N=3
1020 T=105:T=T/180*PI:B=2*SIN(T/2):PRINT B
1030 '[b2t]:T=2*ATN(B/SQR(4-B*B)):T=T*180/PI:PRINT T
1040 MADE=SQR(4-B*B-B*B/TAN(PI/N)/TAN(PI/N))
1050 FOR X=0 TO MADE STEP .05
1060 Y=SQR(4-X*X)*SIN(N*ATN(B/SQR(4-B*B-X*X)))
1070 IF (4-B*B-Y*Y)<=0 THEN 1100
1080 Z=SQR(4-Y*Y)*SIN(N*ATN(B/SQR(4-B*B-Y*Y)))
1090 PRINT X,Z,X-Z
1100 NEXT X
1110 END
n=3,t=105°のとき,x=0.1013,x=0.4996,x=0.7551,すなわち,頂角が105°の12個の二等辺三角形からできている双子の多面体は3つの安定した形状をとるのである.
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【4】まとめ
本当は安定した形がひとつしかない方がよいのであるが,その場合,頂点座標を決めることができて,tに対応するS^3/V^2を計算することができる.
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