■フェルマーの最終定理と有限体(その8)

 代数的ゼータ

  L(s;E)=Π(1-c(p)p^(-s)+p^(1-2s))^(-1)=Π(pに関する部分)

を定義します.

 pに関する部分はp^-s=uとして,

  1-c(p)p^(-s)+p^(1-2s)=(1−αpu)(1−βpu)

  αp+βp=c(p),αpβp=p

と因数分解できます.

 解の個数Npについては,

  p+1−2√p<Np<p+1+2√p

を満たすことが証明されています(ハッセの定理,1933年).これは

  |αp|=|βp|=√p

と同値です.pが動くとき,αpとβpの絶対値は√pとあっさり決まりますが,偏角θpは素数pごとにふらふらと変動します.

 ハッセの不等式は,有限体上の曲線に対するリーマン予想とも呼ばれるものです.解の個数の平均はNp=p+1通り,また,誤差項Mpはpに比べて小さく,|Mp|≦2√pで,Npは各素数pごとにてんでんばらばらになっておらず,そこにはある秩序が存在しているというわけです.

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【1】整数点の分布と佐藤sin^2予想

 佐藤予想とは楕円曲線Cの位数の分布に関するもので,Cが虚数乗法をもたないとき,

  cosθp=(Np−p−1)/2√p=Mp/2√p

の偏角θpが,任意に固定された0≦a≦b≦πに対して,[a,b]となる素数密度:

  #{p≦x;a<θp<b}/π(x) 〜 2/π∫(a,b)sin^2θdθ

すなわち,その角分布はsin^2θに比例するであろうというものです.

 佐藤予想には,多くの言い換えがあって,

(1)x^2+Mpx+p=0

の解を

  √p(cosθ±isinθ)

とするとき,その角分布はsin^2θに比例する

(2)Mp/2√pが√(1−x^2)に比例する

(3)ハミルトンの4元数環(フルヴィッツの整数):(a+bi+cj+dk)/2の半径pの格子点3次元球面:a^2+b^2+c^2+d^2=4pの一様分布の実軸方向への射影である

といっても同じことです.

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【2】テイラーの定理

 佐藤予想はリーマン予想に匹敵する予想であるといわれていました.ところが,驚いたことに2006年になってハーバード大学のリチャード・テイラーによって佐藤予想の楕円曲線版(佐藤・テイト予想と呼ばれる)が証明されました.

 テイラーの定理:

  「佐藤・テイト予想はEのj不変量が整数でなければ正しい.」

 佐藤・テイト予想は定理になったというわけですが,佐藤予想そのものの証明ではないにせよ,100年に一度の大発展といえるのです.

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【補】楕円曲線のj不変量

 y^2=x^3+Px+Qのj不変量は

  j=2^83^3P^3/(4P^3+27Q^2)

で定義されます.

 y^2=x^3+Q → j=0

 y^2=(x−A)(x−B)(x−C) → j=2^8(AB+BC+CA−A^2−B^2−C^2)/(A−B)^2(B−C)^2(C−A)^2

 y^2=x(x−1)(x−A) → j=−2^8(A(A+1)+1)/A^2(A−1)^2

 y^2−=x^3−x^2 →(y−1/2)^2=x^3−x^2+1/4→y^2=(x−1/3)^3−1/3(x−1/3)+19/108 → j=−2^12/11

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