■e^1/2に収束する分数列(その2)
体積1の10次元超球について,断面積の値を計算してみると1.4203・・・となり,体積1の10次元単位立方体の超平面による切り口の体積√2よりも大きくなります.ここで,半径rをほんの少し縮小した超球を考えてみると,単位立方体より断面積は大きいが体積は小さい例を作れることがわかります.
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【1】ビューズマンの定理とボールの反例
ところで,3次元空間内の2つの点対称凸体K,K’に関して,凸体の中心を通る任意の平面について,断面積の不等式
A(K)>A(K’)
が成り立つならば,体積についても不等式
V(K)>V(K’)
が成り立つことが知られています(ビューズマンの定理,1953年).
すなわち,10次元のボールの例は,
A(K)>A(K’)
であっても
V(K)<V(K’)
という高次元におけるビューズマンの反例になっているのです.
さて,10次元以上の一般次元であれば,このような反例が具体的に与えられるのでしょうか?
An=Vn-1・Vn^(1/n-1)
とおくと,
An/An-2=Vn-1・Vn^(1/n-1)/Vn-3・Vn-2^(1/(n-2)-1)
ですから,n→∞のとき,
An/An-2→(Vn/Vn-2)^(1/n)=(2π/n)^(1/n)→1
これより,次元を高くすれば断面積はある極限値に収束しそうです.n→∞のとき,Vn-1→0,Vn→0ですが,An=Vn-1・Vn^(1/n-1)の極限値を求めてみることにしましょう.
Vn=π^(n/2)/(n/2)!より,
An={(n/2)!}^(1-1/n)/{(n-1)/2}!
これを有名なスターリングの近似公式
k!=√2π・k^(k+1/2)・exp(−k)
を使って書き直してみましょう.簡約化すると
An→(n/2)^(n/2)/{(n-1)/2}^(n/2)
={n/(n-1)}^(n/2)
={(1+1/(n-1))^(n-1)}^(1/2)*{n/(n-1)}^(1/2)
→e^(1/2)
したがって,極限値√e=1.6487・・・に収束することがわかります.
√2<√e<√3
ですから,これは高次元ではボールの反例がいくらでも作れることを意味しています.
逆に,9次元以下ではボールの反例は作られませんが,それ以外のビューズマンの反例については,5次元以上で存在することが証明されています(1992年).しかし,4次元で反例が作れるかどうかは,現在,未解決の問題として残されています.
【参】丹野修吉「空間図形の幾何学」,培風館
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