■相似思考の問題? (その4)
クロネッカーの稠密定理とそれに密接に関連したワイルの一様分布定理とは,無理数γを与えたとき,nγの非整数部分{nγ},n^2γの非整数部分{n^2γ}のn=1,2,3,・・・としたときの分布についての定理で,
[1]γが無理数であれば{nγ}は区間[0,1)において一様分布する
[2]γが無理数であれば{n^2γ}は区間[0,1)で一様分布する
というものである.
それに対して,任意の無理数γを与えたとき,
γ^n=[γ^n]+{γ^n}
において,γ^nの非整数部分{γ^n}のn=1,2,3,・・・としたときの分布については,どのようなより強い結果,より深い結果が得られるのであろうか?
たとえば,γ=3/2として{γ^n}を調べてみると,
{1.5^1}=.5
{1.5^2}=.25
{1.5^3}=.375
{1.5^4}=.0625
{1.5^5}=.59375
・・・・・・・・・・・・・
実際に度数分布図を描いてみるとかなり均等に散らばっているようにみえるが,{1.5^n}が一様分布するかどうかは,知る人ぞしる未解決問題である.何とも不思議な話ではあるが,ほとんどすべてのγ(>1)について,{γ^n}は一様分布することが証明されているにもかかわらず,具体的なγで{γ^n}が一様分布するものはひとつも知られていないという状況なのである.
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【1】ピゾ数(ピゾ・ヴィジャヤラガヴァン数)
逆に,具体的なγで{γ^n}が一様分布しない例が,ピゾ数である.
τ=(1+√5)/2,γn={τ^n}とする.γnは[0,1]で一様分布しないのであるが,ここでは非整数部分でなく,一番近い整数との距離を調べてみると
|τ^1|=.38179
|τ^2|=.38179
|τ^3|=.23607
|τ^4|=.14590
|τ^5|=.09017
・・・・・・・・・・・・・
となって,0に近づくことがわかる.
その理由は簡単で,
τ=(1+√5)/2=α,(1−√5)/2=β
とおけば,これらはx^2−x−1=0の2根で,
α+β=1,αβ=−1
α^n+β^nは常に整数となる.このとき,
|β^n|→0,|α^n|→整数
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