■相似思考の問題? (その2)

 正五角形に対角線を描き入れると星形五角形(ソロモンの星)ができる.正五角形と星形五角形の入れ子はペンタグラムと呼ばれ,ピタゴラス派のシンボルマークであったことはよく知られている.

 星形五角形の内部にはもとの正五角形を天地逆転させた小さな正五角形ができる.その中にまた星形五角形を作ると再び順方向の正五角形ができる.このように正五角形は無限に続く入れ子構造を有している.この入れ子構造の背後には黄金比が潜んでいる.黄金比は興味深い数であって,フィボナッチ数列とも密接な関係があることはご存知であろう.

===================================

 4次元正5胞体を2次元平面上に直投影すると,その外形は正三角形,正方形,正五角形など様々に変化する.とくに正五角形に中にすべての対角線を入れた図はペンタグラムそのものとなるから,4次元正5胞体を3次元空間内に直投影した立体図形は立体ペンタグラムということになろう.

 故・乙部融朗住職(東京都荒川区南千住の円通寺)の立体ペンタグラムは,3次元空間に5点を配置して見る角度によって正三角形,正方形,正五角形に見えるものを作るという問題と捉えることもできる.

 この模型の写真は

  石井源久・山口哲「高次元図形サイエンス」,京都大学学術出版会

の83ページに掲載されているので,ご存知の方もおられると思う.

 ところで円通寺のある南千住といえばかつてお化け煙突があった近くである.お化け煙突は見る角度によって2本にも3本にも4本にも見えるという不思議な煙突であった.乙部住職の「立体ペンタグラム」は3次元空間の「お化け煙突」という面白い話題である.それにしても乙部住職はどうやって立体ペンタグラムを製作したのだろうか?

===================================

 なお,この「立体ペンタグラム」は約20年くらい前に名古屋で開かれた展覧会のミュージアムショップで売られる品物として出品されたことがあるそうである.また,この模型は既に東京大学数理研究所に学術資料としてその他の4D多胞体模型とともに寄贈済みとのことである.4D多胞体の写真は

  石井源久・山口哲「高次元図形サイエンス」,京都大学学術出版会

の30−31ページでみることができる.

===================================