中川宏さんのお話では大菱形12・20面体や小菱形12・20面体の木工製作はアルキメデス立体のなかでも最も神経を酷使する作業なのですが,切稜面間距離や切頂面間距離を知り厚さを目安にすることで,高精度木工のストレスはずいぶん緩和されるそうです.
今回のコラムでは,正二十面体の12の頂点を五角錐の高さの1/3で切り取って得られるサッカーボールや正十二面体の20の頂点を三角錐の高さの1/2でカットして得られる12・20面体などの切頂面間距離を求めてみることにします.
正十二面体 正二十面体
辺間距離 2 2
頂点間距離 2.14093 2.35114
面間距離 1.7013 1.86837
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【1】切頂十二面体,12・20面体の切頂面間距離
切頂十二面体と12・20面体はそれぞれ,正十二面体の20の頂点を三角錐の高さの1/3,1/2でカットして得られます.
d=(3−√5)/2,D=(−1+√5)/2
として,頂点C(−d,0,1),E(D,D,D),F(D,−D,D)を底面とし,もう一つの頂点をD(d,0,1)とする三角錐に注目します.
底面の重心は((−d+2D)/3,0,(1+2D)/3)にありますから,切頂面の重心は(d,0,1)と((−d+2D)/3,0,(1+2D)/3)をt:1−tに内分する位置
((1−t)d+t(−d+2D)/3,0,(1−t)+t(1+2D)/3)
にあります.
切頂面間距離はこの点と中心(0,0,0)間距離の2倍で与えられますから
切頂面間距離
切頂十二面体 1.95921 (t=1/3)
12・20面体 1.86834 (t=1/2)
になります.
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【2】切頂二十面体の切頂面間距離
切頂二十面体は正二十面体の12の頂点を五角錐の高さの1/3で切り取って得られるサッカーボールです.
d=(−1+√5)/2
として,(0,1,d),(−d,0,1),(0,−1,d),(1,−d,0),(1,d,0)を底面とし,もう一つの頂点を(d,0,1)とする五角錐に注目します.
底面の重心は((2−d)/5,0,(1+2d)/5)にありますから,切頂面の重心は(d,0,1)と((2−d)/5,0,(1+2d)/5)をt:1−tに内分する位置
((1−t)d+t(2−d)/5,0,(1−t)+t(1+2d)/5)
にあります.
切頂面間距離はこの点と中心(0,0,0)間距離の2倍で与えられますから
切頂面間距離
切頂二十面体 1.91791 (t=1/3)
になります.
サッカーボールでは正六角形面間距離1.86837よりも,正五角形面間距離1.91791の方が大きいというわけです.
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【3】訂正とお詫び
切頂操作により
立方体←→切頂立方体←→立方八面体←→切頂八面体←→正八面体
と連続的に変形させると,外接球を有するという条件を保持したまま遷移していくわけですから,その中間段階で外接球・内接球を併せもつ多面体を見つけることができます.
実際,このようにして発見されたのが正方形面6枚と不等辺六角形面8枚の合計14枚の面で構から構成される「朝鮮サイコロ」であって,
立方体←→切頂立方体←→立方八面体←→★←→切頂八面体←→正八面体
に位置しておりました.→コラム「切頂立方体の計量」,「朝鮮サイコロ・中国サイコロの数理」参照
立方体←→切頂立方体←→立方八面体←→★←→切頂八面体←→正八面体
コラム「色即是空・空即是色」において,外接球・内接球を併せもつ多面体はサッカーボールと正二十面体の間,
正12面体←→切頂12面体←→12・20面体←→切頂20面体←→★←→正20面体
に位置すると書きましたが,どうやら計算間違いがあったようです.
今回のコラムの計算結果は
正12面体←→切頂12面体←→12・20面体←→★←→切頂20面体←→正20面体
に位置することを示しているからです.訂正ならびにお詫びさせていただきます.
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