積分∫(0,∞)Πsin(x/k)/(x/k)dx=?について,
[1]k=iの場合,第3項までだと 1+1/2+1/3<2
[2]k=2i+1の場合,第6項までだと 1+1/3+・・・+1/13<2
[3]k=3i+1の場合,第10項までだと 1+1/4+・・・+1/28+1/31<2
[4]k=2^iの場合,無限項まで計算しても 1+1/2+1/4+1/8+・・・+1/2^(i-1)=2(1-1/2^i)<2
であり,このとき,
∫(0,∞)Πsin(x/k)/(x/k)dx=π/2
となることをみてきた.
今回はダメ押しとして
[5]k=i^2の場合
について調べてみる.
1+1/4+1/9+1/16+・・・+1/i^2<π^2/6<2
が成り立つことは説明するまでもないであろう.
===================================
【1】∫(0,∞)Πsin(x/k^2)/(x/k^2)dx=?
阪本ひろむ氏&Mathematicaに調べてもらった.
∫(0,∞)sinx/xdx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/4)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/4)sinc(x/9)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/4)sinc(x/9)sinc(x/16)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/4)sinc(x/9)・・・sinc(x/13^2)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/4)sinc(x/9)・・・sinc(x/14^2)dx=π/2
ここで打ち切り.
同様に,
∫(0,∞)sincxsinc(x/2^3)sinc(x/3^3)・・・sinc(x/10^3)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/2^4)sinc(x/3^4)・・・sinc(x/10^4)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/2^5)sinc(x/3^5)・・・sinc(x/10^5)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/2^6)sinc(x/3^6)・・・sinc(x/10^6)dx=π/2
∫(0,∞)sincxsinc(x/2^7)sinc(x/3^7)・・・sinc(x/10^7)dx=π/2
ここで打ち切り.
===================================
【2】シンク関数とゼータ関数
微積の学び初めに,x→0としたとき,
sinx/x→1
に出会う.この結果は
(sinx)’=cosx,(cosx)’=−sinx
を示すのに用いられる.
その後,sinxのテイラー展開によって,無限級数
sinx=x−x^3/3!+x^5/5!−x^7/7!+・・・
sinx/x=1−x^2/3!+x^4/5!−x^6/7!+・・・
が示される.
それでは,任意のxに対して,無限積公式
sinx/x=cosx/2cosx/4cosx/8・・・
も示しておこう.
(証明)
sinx=2sinx/2cosx/2
=4sinx/4cosx/4cosx/2
=8sinx/8cosx/8cosx/4cosx/2
・・・・・
=2^nsinx/2^ncosx/2^n・・・cosx/2
書き直すと
sinx=x[sin(x/2^n)/(x/2^n)]cosx/2・・・cosx/2^n
ここで,n→∞のとき,
sin(x/2^n)/(x/2^n)→1
であるから,sinxの無限積表示
sinx=xΠcosx/2^n
=x(1−x^2/π^2)(1−x^2/4π^2)(1−x^2/9π^2)・・・
が得られる.この結果は,sinxがx=0,±π,±2π,±3π,・・・のとき,0になることに一致している.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
シンク関数は
sinx/x=Σ(-1)^mx^2m/(2m+1)!
=1−1/3!x^2 +1/5!x^4 −・・・
=1−1/6x^2+1/120x^4−・・・
とベキ級数表示することが可能です.
このことに関連して,高校の微積分の時間に,x→0としたとき,
sin(x)/(x)→1 すなわち sin(x)→x
となることを教わったことを憶えておられる方も多いと思われますが,これがx=0のとき,
sinc(0)=1
と定義する根拠になっています.
さらに,シンク関数
sinx/x=0
の解が±π,±2π,±3π,±4π,・・・となることを利用して,無限積表示すると
sinx/x=(1-x^2/π^2)(1-x^2/4π^2)(1-x^2/9π^2)(1-x^2/16π^2)・・・
=Π(1-x^2/k^2π^2)→[補]
ここで,
sinx/x=1-1/6x2+120x4-・・・ (ベキ級数表示)
と
sinx/x=Π(1-x^2/k^2π^2) (無限積表示)
=1-1/π^2(Σ1/k^2)x^2+・・・
の両辺を比較することにより,
Σ1/k^2=π^2/6,Σ1/k^4=π^4/90,・・・
が計算されます.
Σ1/k^2はリーマンのゼータ関数ζ(2)に,Σ1/k^4はゼータ関数ζ(4)に相当します.すなわち,
ζ(2)=π^2/6,ζ(4)=π^4/90,
以下,
ζ(6)=π^6/945,ζ(8)=π^8/9450,・・・
と続きます.そして,解析接続の後,
ζ(0)=-1/2,ζ(-1)=-1/12,ζ(-3)=1/120,ζ(-5)=-1/252,・・・
が得られます.
===================================