今回のコラムでは「7の定理」と「5の例外」について再考してみたい.
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【1】クロフトの不動化定理(7の定理)
(その9)において,クロフトの不動化定理を紹介した.P in Qの不動化(平行移動も回転もしない)には少なくとも7ポイントの拘束が必要になるという定理である.ここで,
(1)Pの頂点がQの面と接触するとき,1ポイントと数える.
(2)Pの頂点がQの辺と接触するとき,2ポイントと数える.
(3)Pの頂点がQの頂点と接触するとき,3ポイントと数える.
(4)Pの面がQの面と接触するとき,3ポイントと数える.
この定理がいわんとしていることは3次元空間内でも運動の6自由度(x方向・y方向・z方向の速度,x軸まわり・y軸まわり・z軸まわりの角速度)を同時にコントロールし,それを制御するためには6+1=7の拘束が必要になるという物理的な意味合いである.
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【2】不動化≠最大内接(5の例外)
ところで,不動化されていなければ最大内接ではなく,不動化されているいくつかのケースから最大内接を選び出す必要があることは直観的に尤もらしく思える.すなわち,
動く=最大内接でない
動かない=最大内接の可能性がある
多くの場合,この推論は正しいが,直方体の中に内接する立方体は最大内接であっても動くのであるから例外的なケースが存在することもわかるだろう.例外となる5つのケースは以下の通りである.
[1]最大内接であっても回転するケース
(a)P,Qの2頂点が共通
(b)P,Qの1頂点が共通,かつ,Pの面がQの面と接触する
(c)Pの頂点がQの辺と接触し,かつ,Pの面がQの面と接触する
(d)同一平面上にないPの少なくとも4頂点がQの平行な2面と接触する
[2]最大内接であっても平行移動するケース
(e)同一平面上にないPの少なくとも4頂点がQの2面と接触する
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[参]Croft, HT: On maximal regular polyherda inscribed in a regular polyhedron, Proc. London Math Soc(3), 41, 279-296, 1980
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