(その4)で行った計算では,3価の頂点を自由点とした場合でも凧型60面体の白銀化は不可能と思われたのであるが,金原博昭さんが実際に作った紙模型はちゃんと閉じて美しく星形化された120面体になったということであった.このことを窺い知って私には思いあたる節があった.
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【1】形が一意に決まらない!
多面体の頂点の位置は面の形によって一意に決まるものではありません.たとえば,同じ長さの辺をもつ体積の異なる多面体の例として,屋根(あるいは床)付きのダンボール箱があげられます.出っ張った屋根を中に押し込めば辺の長さは変わらないのに体積はかなり小さくなります.これは2つの安定した形状をとる多面体の例として日常的によく見られるものでしょう.同様に,正20面体のひとつの頂点を押さえてへこませた形も成立します.
そこで,凹凸を逆にしたもうひとつの形を計算することにしました.(その4)にも書きましたが,変形を加える前の凧型24面体と凧型60面体で,諸量を比較すると
凧型24面体 凧型60面体
AB/AD .853829 .859571
∠BAD 40.7895 33.8915
二面角 180 180
となりますから,凧型24面体(緑)ではAB/AD=.859571,凧型60面体(黄)ではAB/AD=.853829を保ったまま変形させて,∠BADと二面角がどのように変化するか調べてみます.
[1]AB/AD
[2]∠BAD
[3]二面角
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【2】計算結果
凧型24面体(緑),凧型60面体(黄)のグラフを描いてみると,凧型60面体の∠BAD=40.7895のグラフに交点が出現することがわかります.このとき,白銀化凧型60面体の変形パラメータはs=0.720763,t=1.04097で,AB/AD=.853829,二面角=74.9556になりました.
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