立方体に含まれる最大体積の正P面体は立方体の3回回転対称軸に3回回転対称軸が合致したときに得られるようであるが,中川宏さんはそれを敷衍して,すべてのプラトン立体,アルキメデス立体,カタラン立体において,立方体に内接する最大体積の多面体Pは3回回転対称軸を立方体のそれに合致したときに得られると予想している.
今回のコラムでは,アルキメデス立体における中川予想を検証してみることにするが,ミラーの多面体のように大域的な3回回転対称性をもたない場合は,局所的な3回回転対称性,すなわち,正三角形面(あるいは正六角形面)の重心または3価の頂点が[1,1,1]方向と一致していれば予想成立と考えることにする.
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【1】アルキメデス立体
アルキメデス立体には16種類あります.木工的な視点からアルキメデス立体を分類すると
1.切頂型
a)非中点切頂型・・・切頂四面体,切頂立方体,切頂八面体,切頂十二面体,切頂二十面体
b)中点切頂型・・・立方八面体,12・20面体
2.切頂・切稜型
a)切頂優位型・・・大菱形立方八面体,大菱形12・20面体
b)切稜優位型・・・小菱形立方八面体,小菱形12・20面体
3.ねじれ型・・・ねじれ立方体,ねじれ12面体
に分類されます.
切頂型では切頂の深さが正多面体の頂点と辺の中点との間にあるもの(あるいは同じことですが双対正多面体の辺の中点を越えたもの)が非中点型,辺の中点にあるものが中点型です.切頂・切稜型は切稜多面体に切頂を加えたもので,相対的に頂点と辺のどちらを深く削るかによって切頂優位型と切稜優位型に細分されます.ねじれ型とは奇妙な名前ですが,ある頂点を取り囲む3つの面の対角線の長さが等しい切頂・切稜型立体を中間的に作り,最終的にはそれをさらに削って仕上げます.
これで13種類ということになりますが,いささか注釈が必要です.小菱形立方八面体には八角鉢状の上蓋を45°ねじった形(ミラーの多面体)も考えられます.また,2つのねじれ型には3次元空間で鏡像をなすものが考えられます.これらを含めることにすれば16種類になるのです.
しかしながら,この分類は唯一無二のものではありません.たとえば,切頂八面体は正八面体の切頂によって得られますが,正四面体の切頂・切稜によっても得られるからです.さらに,16種類を正四面体群,正八面体群,正二十面体群に分類することもできます.
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【2】アルキメデス立体における中川予想
[1]切頂四面体
正四面体では立方体の面に辺が接する納まり方が最大ですが,切頂四面体では立方体の面に切頂四面体の三角形面が接する納まり方が最大のようです.正四面体とは異なる納まり方をするのですが,立方体の3回回転対称軸に3回回転対称軸が合致し,正六角形面の重心は[1,1,1]方向と一致します.
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[2]切頂立方体,立方八面体,切頂八面体
切頂立方体と立方八面体では正三角形の重心,切頂八面体では正六角形面の重心が[1,1,1]方向と一致します.
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[3]切頂十二面体,12・20面体,切頂二十面体
切頂十二面体と12・20面体では正三角形の重心,切頂二十面体では正六角形面の重心が[1,1,1]方向と一致します.
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[4]大菱形立方八面体,小菱形立方八面体
大菱形立方八面体では正六角形の重心,小菱形立方八面体では正三角形面の重心が[1,1,1]方向と一致します.小菱形立方八面体では正方形面の重心が[1,1,1]方向と一致するような2通りの納まり方があります.
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[5]大菱形12・20面体,小菱形12・20面体
大菱形12・20面体では正六角形の重心,小菱形12・20面体では正三角形面の重心が[1,1,1]方向と一致します.
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[6]ねじれ立方体,ねじれ12面体
どちらも正三角形面の重心が[1,1,1]方向と一致します.
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[7]ミラーの多面体
小菱形立方八面体と同様に,正三角形面の重心が[1,1,1]方向と一致する納まり方と正方形面の重心が[1,1,1]方向と一致するような2通りの納まり方があります.
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【3】まとめ
立方体の3回回転対称軸に3回回転対称軸が合致したときに最大体積が得られるようであるが,ミラーの多面体のようにそもそも大域的な3回回転対称性をもたない場合でも局所的な3回回転対称軸を一致させたとき最大になることは検証された.
また,立方体に6面で内接する多面体と6稜で内接する多面体に分けることができ,前者に属するのは切頂立方体,立方八面体,大菱形立方八面体,小菱形立方八面体,ねじれ立方体,(ミラーの多面体)である.残りはすべて立方体に6稜で内接する多面体である.
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