■基本単体の二面角(その8)

【1】n次元超立方体

 n次元ユークリッド空間において,1辺の長さが1の立方体[-1/2,1/2]^nをn次元単位立方体といいます.その体積は1ですが,もっとも離れた2頂点を結ぶ対角線の長さはn次元ユークリッド空間の距離の定義から

  √(1^2+1^2+・・・+1^2)=√n

となります.したがって,次元nが大きくなると対角線の長さ√nはどんどん大きくなり,身長170cmの人間はおろか,ついには地球でさえ含むことができるようになります.

 辺の長さが4の正方形に4つの単位円板を詰めると,4つの円板で囲まれた部分に,第5の小さな円を入れることができます.また,辺の長さが4の立方体の8つのカドに単位球を8個詰めると,中にできる隙間に第9の小さな球を入れることができます.ピタゴラスの定理によって第5の円,第9の球の半径はそれぞれ√2−1,√3−1だとわかります.

 これと同じことを4次元以上の空間で行うことができます.もはやイメージすることは不可能ですが,1辺の長さが4の4次元超立方体の16個のカドに16個の単位球を詰めると,中の隙間には半径√4−1=1の4次元超球(すなわち単位球)が入ります.同様に,1辺の長さが4のn次元超立方体の2^n個のカドに単位球を詰めると,中の隙間に半径√n−1のn次元超球が詰められるのです.

 しかし,ここの驚きが潜んでいます.たとえば,n=9の場合,中に詰められるn次元超球の半径は√9−1=2であり,この球は外側の立方体の表面に接してしまい,n>9だとはみ出してしまうのです.この驚くべき結論は,日常生活ではありえないだけに面食らってしまいます.

 次元とともにはみ出る部分が増えているのですが,球の詰め込みに関するこのはみ出し現象は,モーザーのパラドックスとして知られているものです.この逆説は,人間の直観や勘は3次元までの世界では働きますが,4次元以上の高次元についてはあまり働かないという例として,しばしば引き合いに出されます.

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【2】n次元超立方体格子

 4次元単純立方格子を考えます.単位球を

  (0,0,0,0)

  (0,1,0,0)

・・・・・・・・・

  (1,1,1,1)

におきます.すると対角線上の点

  (1/2,1/2,1/2,1/2)

にも単位球を置くことができます.

 9次元単純立方格子を考えます.単位球を

  (0,0,0,0,0,0,0,0,0)

  (0,1,0,0,0,0,0,0,0)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  (1,1,1,1,1,1,1,1,1)

におきます.すると対角線上の点

  (1/3,1/3,1/3,1/3,1/3,1/3,1/3,1/3,1/3)

  (2/3,2/3,2/3,2/3,2/3,2/3,2/3,2/3,2/3)

にも単位球を置くことができるというわけです.

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