■n次元平行多面体数(その151)

【1】8次元におけるkissing number

 8次元になると面心立方格子に十分な隙間ができるので,112個の接触点

1/√2(0,・・・,±1,0,・・・,±1,0・・・)   (±1の個数は2つ)  

と128個の隙間の点

1/√8(±1,±1,±1,±1,±1,±1,±1,±1)   (+の個数は偶数)

に同じ大きさの球が詰め込み可能になります.

 E8格子は接触数240を与えるのですが,τ8の240個の点はE8型の単純リー代数の240個のルート格子で実現されます.この隙間は,9個の整数に対して法3で合同となるので,

  x1+x2+x3+x4+x5+x6+x7+x8+x9=0

であって,E8では9個の球によって完全に充填した構造となっています.

 以下では,

  [参]一松信「現代に活かす初等幾何学入門」岩波書店

の助けを借りて,n=8の場合について最密充填を与える格子の構成法を略述します.

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【2】ケイリー整数とE8格子

 八元数Σajejにおいて,係数aj(j=0~7)が

  1)整数値をとるもの

  2)半整数値の奇数倍をとるもの

  3)4個が整数値,4個が半整数値の奇数倍をとるもの

を加えて,「ケイリーの整数」と呼びます.

 ただし,3)において整数である番号は(i,j,k)7組に0(実数)を加えた集合および(0〜7)に対するその補集合の14組に限ります.

 このような点をすべてとると,8次元空間内で隣り合う2点間の距離がすべて1の格子ができあがります.原点に隣接する点は240個あり,それらと原点を結ぶベクトルが例外型リー環のE8ルート系を表すので,この格子をE8格子といいます.

 E8格子にはほかにもいくつかの構成法があり,ここではケイリー整数との関連で説明しましたが,その配列は本質的にはこの形しかありません.S^7の上の240個の点は直交変換で互いに移りうる点の組を同じものとみなすと一意なのです.

 そして,8次元空間において,2個の正軸体(正8面体の拡張)と1個の正単体(正4面体の拡張)を組み合わせると空間充填形ができるのですが,ケイリー整数の作る格子がその具体形になっています.

 なお,E8格子において,原点からの距離が√nである格子点の個数は

  240σ3(n)

(ここで,σ3(n)はnの約数の3乗の和)と表せることが知られています.すなわち,

  n=1 → 240・1^3=240個

  n=2 → 240・(1^3+2^3)=2160個

  n=3 → 240・(1^3+3^3)=6720個

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