■立方体に内接する最大の正多面体(その7)

 今回のコラムでは正多面体に内接する最大の正八面体についてまとめてみま

す.O in Cはすでに取り上げてあるので割愛し,ここで取り上げるのは3つのケース

  O in T, O in D, O in I

です.

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【1】O in T

 正四面体の6個の辺の中点を結ぶと正四面体の中に正八面体ができますが,その正八面体が正四面体に内接する最大の正八面体です.したがって,その体積比は1/2となります.

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【2】O in D

 正十二面体の辺心図において,もとの立方体の1辺の長さを2,もとの立方体表面に残る1本の稜の長さを2dとします(0≦d≦1).すると頂点は

  (±1,±d,0),(0,±d,±1),(±d,0,±1)

すなわち,切削してできる五角形面の頂点をxyz座標で表すと(0,1,d)の巡回置換(1,d,0),(d,0,1)を頂点にもつことがわかります.dは

  d=(3−√5)/2

と計算されます.

 正十二面体に内接する正八面体の体積が最大となるのは,正八面体の6つの頂点が正十二面体の辺の中点

  (±1,0,0),(0,±1,0),(0,0,±1)

にあるときです.したがって,正八面体の辺の長さは√2で,正八面体の体積は立方体の1/6ですから,正八面体と正十二面体の体積比は

  32/{6(3−√5)^3(15+7√5)}=0.390274

になります.

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【3】O in I

 正二十面体に内接する最大の正八面体の場合,6つの頂点を

  (±1,0,0),(0,±1,0),(0,0,±1)

に置いたときよりも大きくすることができます.

 正十二面体の場合と同様に,正二十面体の辺心図において,もとの立方体の1辺の長さを2,もとの立方体表面に残る1本の稜の長さを2dとします(0≦d≦1).すると切稜角φとの関係は

  tanφ=1−d

で表されます.

 正十二面体ではもとの立方体の表面の痕跡がないまったく新たに作られる頂点がありますが,正二十面体ではすべての頂点がもとの立方体の表面上にあります.ここで,三角面の頂点の座標を

  A(0,1,d)

  B(−d,0,1)

  C(d,0,1)

  D(0,d,0)

とおきます.

 ABC面が正三角形となるための条件は,辺AC=辺BDより

  d^2+(d−1)^2+1=4d^2  → d^2+d−1=0

ですから,これを解いて

  d=(√5−1)/2

 切稜角は

  tanφ=1−d → φ=20.9052°

と計算されます.

 また,三角形ACDにおいて

  A(0,1,d)

  C(d,0,1)

  D(1,d,0)

ですから

  辺AC=辺CD=辺DA={d^2+(d−1)^2+1}^(1/2)

すなわち,三角形ACDも正三角形です.

 次に,正三角形ACDが切頂面であることを証明します.

  OA=OC=OD={d^2+1}^(1/2)

より3点A,C,Dは原点Oから等距離にあり,ACD面の重心Gと原点Oを結ぶ線はACD面と直交することがわかります.

 また,重心Gは

  ((1+d)/3,(1+d)/3,(1+d)/3)

したがって,重心Gは原点Oと(1,1,1)を結ぶ線上にあることから正三角形ACDが切頂面であることが理解されます.

 ちなみに(1,1,1)はACD面の法線ベクトルですが,ACD面の単位法線ベクトルp↑は

  p↑=(1/√3,1/√3,1/√3)

ですから,ACD面とxy平面(yz平面,zx平面)のなす角(切頂角)は  π/2−arccos(1/√3)

 =arctan(1/√2)=35.2644°

となって,切頂定規(1:√2:√3)が必要になるというわけです.

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 正二十面体に内接する正八面体の2つの頂点を正二十面体の頂点E(1,d,0),F(1,−d,0)を結ぶ辺をy:1−yに内分する点G(1,d(1−2y),0)とその対蹠点H(−1,−d(1−2y),0)におきます.

 このとき,原点Oを通りGH軸と垂直な平面は,正二十面体と10点で交わります.この10点から点(0,0,±1)を除いた8点からひとつおきに4点を選びます.この4点が正八面体の残りの頂点になるものとします.

 私はこの4点の座標を解析幾何学的に定めて正八面体になるための条件から辺の長さを決定したのですが,かなり面倒な計算式になってしまいました.それに対して,クロフトの論文ではギリシア幾何学的にもっとスマートに求めています.ここではクロフトの計算方法を紹介しますが,次のように考えると複雑な計算を回避できます.

 正二十面体の辺の長さを1とすると,正八面体の辺の長さは2通りの計算式

  1+2ycos(2π/5)

  (y^2+3(1−y)^2sin^2δ)^1/2

で表されます.2δは正二十面体の二面角で

  cos2δ=1−2sin^2δ=−√5/3

  sin^2δ=(3+√5)/6

ですから,

  1+2ycos(2π/5)=(y^2+3(1−y)^2sin^2δ)^1/2

を解いて

  y=1−1/√2=0.292893,1−y=1/√2=0.707107

 これを

  1+2ycos(2π/5)

に代入すると,正八面体の1辺の長さは

  1+2ycos(2π/5)=(2−√10+√2+2√5)/4

と求められます.

 このことから,体積比は

  √2/3{(2−√10+√2+2√5)/4}^3/{(15+5√5)/12}=0.355934

と計算されます.

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【補】黄金比ついて

 黄金比φ=(1+√5)/2は,正五角形の1辺の長さと対角線の長さの比であり,2次方程式

  x^2−x−1=0

の正の解である.したがって,φ^2−φ−1=0である.

 この等式から

  φ^2=φ+1,1/φ=φ−1,1/φ^2=2−φ

などが得られる.これらはφを含む式をaφ+bの形に変形するときに用いられる.

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