まず最初にゼータ関数の複素零点を次々に生み出す無限次元連立方程式に関する杉岡幹生氏の予想を再掲しますが,最近,杉岡氏はその連立方程式を単一の方程式に書き換えました.今回のコラムではその方程式による複素零点の表現について紹介したいと思います.
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【1】リーマン予想から杉岡予想へ
ゼータ関数を複素数へ拡張する場合,
ζ(s)=Σn^(-s)=Σexp(-slogn) (n=1~)
s=u+vi,u=Re(s),v=Im(s)として,オイラーの公式
exp(iθ)=cosθ+isinθ
を用いれば
ζ(s)=Σexp(-ulogn){cos(-vlogn)+isin(-vlogn)}
=Σn^(-u)cos(vlogn)-iΣn^(-u)sin(vlogn)
ζ(s)=f(u,v)+ig(u,v),Reζ(s)=f(u,v),Imζ(s)=g(u,v)
ここでcos,sinをテイラー展開します.
cos(x)=Σ(-1)^k・x^2k/(2k)! (k=0~)
cos(vlogn)=Σ(-1)^k・(vlogn)^2k/(2k)!
Reζ(s)=ΣΣ(-1)^k・(vlogn)^2k/(2k)!/n^u
sin(x)=Σ(-1)^k・x^(2k+1)/(2k+1)! (k=0~)
sin(vlogn)=Σ(-1)^k・(vlogn)^(2k+1)/(2k+1)!
Imζ(s)=ΣΣ(-1)^k・(vlogn)^(2k+1)/(2k+1)!/n^u
Reζ(s)=ΣΣ(-1)^k/(2k)!・(vlogn)^2k/n^u
={1-1/2^u+1/3^u-1/4^u+・・・}
+{(log2)^2/2^u-(log3)^2/3^u+(log4)^2/4^u-・・・}・v^2/2!
-{(log2)^4/2^u-(log3)^4/3^u+(log4)^4/4^u-・・・}・v^4/4!
+{(log2)^6/2^u-(log3)^6/3^u+(log4)^6/4^u-・・・}・v^6/6!
-・・・・・
Imζ(s)=ΣΣ(-1)^k/(2k+1)!・(vlogn)^(2k+1)/n^u
={(log2)^1/2^u-(log3)^1/3^u+(log4)^1/4^u-・・・}・v^1/1!
-{(log2)^3/2^u-(log3)^3/3^u+(log4)^3/4^u-・・・}・v^3/3!
+{(log2)^5/2^u-(log3)^5/3^u+(log4)^5/4^u-・・・}・v^5/5!
-・・・・・
ゼータ関数の複素零点は,
Reζ(s)=Imζ(s)=0
を同時に満たすものですが,s=1/2の軸に関する対称性に基づいて,ζ(s)の零点が自明な零点s=−2,−4,・・・,−2nと非自明な零点s=1/2+viの線上にあるというのが有名なリーマン予想(1859年)で,実際,ゼータ関数の複素零点は
ζ(1/2+i14.134725・・・)=0
ζ(1/2+i21.022040・・・)=0
ζ(1/2+i25.010856・・・)=0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
と続きます.
そこで,u=1/2とおいて書いてみるとvに関する無限次元方程式が得られるのですが,杉岡氏はこれからリーマン予想と同値な連立無限次元方程式
{1-1/2^c+1/3^c-1/4^c+・・・}
+{(log2)^2/2^c-(log3)^2/3^c+(log4)^2/4^c-・・・}・x^2/2!
-{(log2)^4/2^c-(log3)^4/3^c+(log4)^4/4^c-・・・}・x^4/4!
+{(log2)^6/2^c-(log3)^6/3^c+(log4)^6/4^c-・・・}・x^6/6!
-・・・・・=0
{(log2)^1/2^c-(log3)^1/3^c+(log4)^1/4^c-・・・}・x^1/1!
-{(log2)^3/2^c-(log3)^3/3^c+(log4)^3/4^c-・・・}・x^3/3!
+{(log2)^5/2^c-(log3)^5/3^c+(log4)^5/4^c-・・・}・x^5/5!
-・・・・・=0
を同時に満たす実数解が存在するのはc=1/2のときのみであろうと予想しています.
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【2】杉岡予想の書き換え
杉岡氏はこの連立無限次元方程式を数値的に解いて
v1=14.134725・・・
v2=21.022040・・・
v3=25.010856・・・
を求めていますが,さらにこの無限次元方程式をもっと完全に対称で美しい形に書いて
cos(xlog1)/1^c-cos(xlog2)/2^c+cos(xlog3)/3^c-cos(xlog4)/4^c+・・・=0
sin(xlog1)/1^c-sin(xlog2)/2^c+sin(xlog3)/3^c-sin(xlog4)/4^c+・・・=0
を同時に満たす実数解が存在するのはc=1/2のときのみであろうと予想しています.
ここで,杉岡予想は
c(x)=cos(xlog1)/1^c-cos(xlog2)/2^c+cos(xlog3)/3^c-cos(xlog4)/4^c+・・・
s(x)=sin(xlog1)/1^c-sin(xlog2)/2^c+sin(xlog3)/3^c-sin(xlog4)/4^c+・・・
とおけば
c(x)^2+s(x)^2=0
は連立方程式から単一方程式になり,杉岡予想は実数解が存在するのはc=1/2のときのみであろうと言い換えることができます.
c(x)^2+s(x)^2=0
を書き換えた形については杉岡幹生氏のHPの記事
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page191.htm
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page192.htm
をご覧ください.
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