■ある無限級数(その61)
【1】ケイリー整数とE8格子
八元数Σajejにおいて,係数aj(j=0~7)が
1)整数値をとるもの
2)半整数値の奇数倍をとるもの
3)4個が整数値,4個が半整数値の奇数倍をとるもの
を加えて,「ケイリーの整数」と呼びます.
ただし,3)において整数である番号は(i,j,k)7組に0(実数)を加えた集合および(0〜7)に対するその補集合の14組に限ります.
このような点をすべてとると,8次元空間内で隣り合う2点間の距離がすべて1の格子ができあがります.原点に隣接する点は240個あり,それらと原点を結ぶベクトルが例外型リー環のE8ルート系を表すので,この格子をE8格子といいます.
E8格子にはほかにもいくつかの構成法があり,ここではケイリー整数との関連で説明しましたが,その配列は本質的にはこの形しかありません.S^7の上の240個の点は直交変換で互いに移りうる点の組を同じものとみなすと一意なのです.
そして,8次元空間において,2個の正軸体(正8面体の拡張)と1個の正単体(正4面体の拡張)を組み合わせると空間充填形ができるのですが,ケイリー整数の作る格子がその具体形になっています.
なお,E8格子において,原点からの距離が√nである格子点の個数は
240σ3(n)
(ここで,σ3(n)はnの約数の3乗の和)と表せることが知られています.すなわち,
n=1 → 240・1^3=240個
n=2 → 240・(1^3+2^3)=2160個
n=3 → 240・(1^3+3^3)=6720個
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【2】D4格子
D4格子(=F4格子)は4次元の体心立方格子であり,正24胞体による4次元空間の充填形に相当するものです.ここで,σ0(n)をnの奇数の約数の和と定義します.そうすればD4格子では原点からのノルムがnである点の個数が
24σ0(n)
で与えられるのですが,
n=1 → 24・1=24個
n=2 → 24・1=24個
n=3 → 24・(1+3)=96個
n=4 → 24・1=24個
n=5 → 24・(1+5)=144個
n=6 → 24・(1+3)=96個
n=7 → 24・(1+7)=192個
n=8 → 24・1=24個
n=9 → 24・(1+3+9)=312個
n=10 → 24・(1+5)=144個
さらに,D4格子の各格子点の勢力範囲が1/2であることを使うと
Σ1/n^2=π^2/6
を証明できます.同様に,例外型リー環に属する8次元のE8格子では
240σ3(n)
であり,勢力域の体積が1/16であることから
Σ1/n^4=π^4/90
を得ることができます.
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