定幅図形であるルーローの三角形では最高点を同じ高さに保つことはできても中心位置は上下にブレて高さを一定には保てません.今回のコラムではルーローの三角形の重心の高さが一定に保たれたまま滑らかに転がることができる道を求めてみることにします.
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【1】ルーローの三角形
ルーローの三角形の重心を極座標の原点とします.1辺の長さが2の正三角形に円弧をつけたルーローの三角形の場合,重心から頂点までの距離は2√3/3ですから,下辺は
2^2=r^2+(2√3/3)^2+2(2√3/3)rsinθ
より
r=2(sinθ+(sin^2θ+2)^1/2)/√3 (-5π/6≦θ≦-π/6)
で表されます.したがって,解くべき方程式は
dθ/dx=−√3(sinθ−(sin^2θ+2)^1/2)/4 (θ(0)=-π/2)
この方程式は変数分離形ですから,
∫(-π/2,θ)(sinθ+(sin^2θ+2)^1/2)dθ=√3/2∫(0,x)dx
に帰着されます.
左辺は
−cosθ+√2E(−1/2)+√2E(θ,−1/2)
ですから,第2種楕円積分を変数変換したものになり簡単な形には表せません.右辺は√3/2xですから,
x=−2{cosθ−√2E(−1/2)−√2E(θ,−1/2)}/√3
y=−2(sinθ+(sin^2θ+2)^1/2)/√3
(-5π/6≦θ≦-π/6)
直交座標y(x)や極座標r(θ)の形には表せそうにありませんから,パラメータ表示(x(θ),y(θ))のままにしておきます.
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【2】もうひとつの正方形の内転形
正方形の内転形となるフルヴィッツ・藤原曲線(8次曲線)の接線極座標における方程式は
p(u)=a+bcos(3u)
で表されます.
p’(u)=−3bsin(3u)
p”(u)=−9bcos(3u)
ρ(u)=p(u)+p”(u)=a−8bcos(3u)≧0
より,a=8bとおきます.
p(u)=8b+bcos(3u)
また,一定の幅1をもつという所与の条件
p(u)+p(u+π)=16b=1,b=1/16,a=1/2
より
p(u)=1/2(1+1/8cos(3u))
で与えられます.
p’(u)=−3/16sin(3u)
p”(u)=−9/16cos(3u)
ここで,接線極座標と直交座標,極座標の関係は
x=p(u)cos(u)−p’(u)sin(u)
y=p(u)sin(u)+p’(u)cos(u)
x’(u)=−(p(u)+p”(u))sin(u)
y’(u)=(p(u)+p”(u))cos(u)
r=(x^2+y^2)^1/2=(p^2+p’^2)^1/2
=(1/4^4(73+16cos(3u)−8cos^2(3u))^1/2
θ=u+arctan(p’/p)
で与えられます.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
73+16cos(3u)−8cos^2(3u)=16r^2
cos(3u)=1−(81/8−2r^2)^1/2
r^2=−(1−cos3u)^2/2+81/16
r^2=−2(sin3u/2)^4+81/16
ここでもしθ=uならば,下辺は−2π/3≦θ≦0なので,
r={−(1−cos3θ)^2/2+81/16}^1/2
={−2(sin3θ/2)^4+81/16}^1/2 (-2π/3≦θ≦0)
と表されますが,
θ=u+arctan(p’/p)
ですから簡単な形には表せません.そのため,r(θ)でなくr(u)のままにしておきます.
したがって,解くべき方程式は
du/dx={−2(sin(3u/2))^4+81/16}^-1/2
この方程式は変数分離形ですから,
∫(u(0),u){73+16cos(3u)−8cos^2(3u)}^1/2du=4∫(0,x)dx
に帰着されます.
ここでu(0)はθ=-π/3のときのuの値ですが,u=nπ/3のとき,arctan(p’/p)=0より,u=θとなりますから
∫(-π/3,u){73+16cos(3u)−8cos^2(3u)}^1/2du=4∫(0,x)dx
−2π/3≦θ≦0 → −2π/3≦u≦0
ルーローの三角形では(sin^2x+a^2)^1/2の形でしたが,フルヴィッツ・藤原曲線(8次曲線)では(−sin^4x+a^2)^1/2の形になっています.しかし,円や正多角形の場合とは違って,この積分を手計算で求めることはかなり大変なので,阪本ひろむ氏に数式処理ソフトMathmaticaを用いて計算してもらったのですが,言葉が一切入らない数式が数ページにも及び簡単な形には表せませんでした.
ともあれ,パラメータ表示
x=x(u)=1/4∫(-π/3,u){73+16cos(3u)−8cos^2(3u)}^1/2du
y=−1/4{73+16cos(3u)−8cos^2(3u)}^1/2
(−2π/3≦u≦0)
することができました.
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【3】結果
座標間の幾何学的関係さえわかれば,これらの問題の計算方法を示すのは簡単なのですが,残念ながらいずれの問題でも直交座標,極座標での方程式の形には表すことはできませんでした.それでも,パラメ−タ表示の形でならば道の形を決定することができたのでやれやれというところです.
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