■空間充填四面体の木工製作

  GOLDBERG M.: the infinite families of tetrahedral space-filler, J. Combinat. Theory A16(1974), 384-354

には空間充填四面体が5種類紹介されている.それらにはSommerville No.1-4とHill, second typeと命名されている.以下,これらをS1〜S4,H0と略記する.

 一方,

  ENGEL P.: Die Typen von Wirkungsbereichspolyedern in den symmorphen kubischen Raumgruppen, Zeitschr. Kristallographie, 157(1981), 259-275

には6種類の空間充填四面体が紹介されていて,Sommerville No.1-4とHadwiger-Hill H30(0),H31(0)とある.以下,これらをS1〜S4,H1〜H2と略記する.

 S1は工藤の三角錐(2/24立方体),S2は1/24立方体,S3は1/12立方体,H1は鼈臑(べつどう)である.鼈臑(べつどう)は単位立方体[0,1]^3の1≧x≧y≧z≧0なる部分である.すなわち,1/6立方体であって,秋山仁先生によりテトラドロンと名付けられている.これらはすでに木工製作が済んでいるので,今回は中川宏さんにS4,H2,H0について検討して頂いた.

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【1】空間充填四面体の系譜

 H2は鼈臑(テトラドロン)を2分割した多面体で鏡像体が存在する.鼈臑にはもうひとつ四面体になる切り方があり,それがS3(1/12立方体)であるが,S3は左右対称である.

 S4はH2を2個貼り併せた多面体であり左右対称になる.これを4個組み合わせると工藤の三角錐になる.

 H0は工藤の三角錐の二等辺三角形面を非対称に切って全体として左右対称の四面体にしたものである.

 合同分割が左右対称になるのか鏡像になるのかは,頭の中だけで考えてもなかなかわからない問題である.以下,空間充填四面体の系譜を示す.

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【2】雑感

 空間充填四面体についてさえ,これですべてかどうかわからないのであるがともあれ,7種類の空間充填四面体が揃った.

 なお,1≧x≧y≧z≧0の鼈臑(べつどう)は立方体の中心を通る平面x+y+z=3/2で2等分することができる.この図形も空間充填多面体であり,秋山仁先生によりペンタドロンと名付けられた.

 ペンタドロンは平行多面体の元素σである.

  [定理]平行多面体の元素数は1である(立方体σ12(σ96),6角柱σ144,菱形12面体σ192,長菱形12面体σ384,切頂8面体σ48).

 鼈臑(テトラドロン)はσ2であるが,σ2にはいくつかの空間充填異性体が存在する.

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