立方体に内接する最大の正八面体が立方体に収まる様子は(その3)で示したが,不思議な収まり方で,立方体に接触する辺とそうでない辺の長さが等しいことはすぐには気づかないであろう.
正三角形面よりなる正多面体では面の重心は[1,1,1]方向を向く.たとえば正四面体のひとつの面の法線方向を[1,1,1]とすると,残りの3面は[−1,−1,1],[1,−1,−1],[−1,1,−1]方向を向く.正二十面体の8面は[±1,±1,±1]方向を向くし,正八面体の2面は[1,1,1],[−1,−1,−1]方向を向くというわけである.それに対して,立方体に内接する最大の正十二体では[1,1,1]方向を向く切頂面をもっていない.
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【1】正十二面体の切削角度の計算
木工製作のためには切削角度を計算しなければならないが,その際,すべての頂点の座標を求める必要はなく,点心図の中心に配置した頂点の座標(c,c,c)だけで十分である.
頂点間距離の関係より
2(3c^2)^1/2=2(1+d^2)^1/2
c^2=(1+d^2)/3,c=1/φ=0.618034
切削を開始する辺の中点は
((a+b)/2,(a+b)/2,L)
であるから(c,c,c),(L,L,L)の関係より切削角は17.3583°と46.0767°と計算される.
また,もとの立方体の1辺の長さを2とすると,もとの立方体表面に残る1本の稜の長さは
2d/L=.788567
切削を開始する辺の端点と中点は
(a/L,b/L,1)=(.0977826,-.459818,1)
((a+b)/2L,(a+b)/2L,1)=(-.181018,-.181018,1)
正方形面の中心からこの辺までの距離は
|(a+b)/√2L|=.255998=(√2−1)/φ
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【2】立方体に内接する最大の正十二面体の木工製作過程
このように立方体から切り出した正十二面体の体積は約1割増になります.以下,中川宏さんによる木工製作過程を掲げます.最初に切頂の足場作りのために45°切稜してから,切削角度46.0767°で3面を切頂し,引き続いて切削角度17.3583°で3面を切頂し,それぞれの対面を平行に仕上げます.
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