■立方体に内接する最大の正多面体(その2)

 (その1)では立方体に内接する最大の正八面体を取り上げたので,今回はそのとき宿題にした立方体に内接する最大の正十二面体の問題を取り上げたいと思う.

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【1】正十二面体の計量

 正12面体の辺心図において,もとの立方体の1辺の長さを2,もとの立方体表面に残る1本の稜の長さを2dとします(0≦d≦1).すると頂点は

  (±1,±d,0),(0,±d,±1),(±d,0,±1)

すなわち,切削してできる五角形面の頂点をxyz座標で表すと(0,1,d)の巡回置換(1,d,0),(d,0,1)を頂点にもつことがわかります.

 この3点の重心は

  ((1+d)/3,(1+d)/3,(1+d)/3)

ですからこの3点を結ぶと正三角形になること,また,もとの立方体の表面の痕跡がないまったく新たに作られた頂点はこの3点から等距離にあることから

  (D,D,D)

と表されることも理解されます.

 すなわち,五角面の頂点の座標は

  A(0,1,d)

  B(−D,D,D)

  C(−d,0,1)

  D(d,0,1)

  E(D,D,D)

ここで,

  D=1/(2−d)

と計算されます.

 5辺が等長となるための条件は,辺AE=辺CDより

  D^2+(D−1)^2+(D−d)^2=4d^2  → d^2−3d+1=0

ですから,これを解いて

  d=(3−√5)/2,D=(−1+√5)/2

 正十二面体の辺間距離は2ですが,頂点間距離は

  2(1+d^2)^1/2=2.14093

また,切稜角φとの関係は

  tanφ=1−d

で表されますから,面間距離は

  2/(1+(1−d)^2)^1/2=1.7013

となり,面間距離が最小であることがわかります.

 それに対して,正二十面体では

  d=(√5−1)/2

でも求められますから,両者を比較すると

        正十二面体       正二十面体

辺間距離      2           2

頂点間距離   2.14093     2.35114

面間距離    1.7013      1.86837

になります.

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【2】辺心図から点心図へ

 正二十面体の辺心図では対角線[1,1,1]方向には三角形面の重心がありましたが,正十二面体は正二十面体の双対ですから[1,1,1]方向に頂点を配置してみます.この様子は正十二面体の辺心図や面心図でなく,点心図を見れば理解しやすくなります.正十二面体の点心図は歪十二角形になります.

 このとき,[1,1,1]方向にある正十二面体の頂点やそれに隣接する3頂点を立方体の辺上あるいは面上に配置することはできません.立方体の面上に接触するのは歪十二角形のうちの3辺です.この3辺は立方体の正方形面の対角線から少し離れて平行に並んでいます.回転行列を使った解法は複雑になりますが,この平行性を利用すると簡単な方程式に帰着されます.

 正十二面体が内接する立方体の1辺の長さを2L,立方体の面に接触する辺の端点を(a,b,L)とおくと平行性よりもう一方の端点は(b,a,L),他の接触点も同様に(a,L,b),(b,L,a),(L,a,b),(L,b,a)となります.

接点間距離:(2(a−b)^2)^1/2=2d  → b=a−d√2

接点間距離:(2(L−a)^2)^1/2=2φd → L=a+dφ√2

辺間距離 :2(2((a+b)/2)^2+L^2)^1/2=2

より

  2(a−d/√2)^2+(a+dφ√2)^2=1

  3a^2+2d√2(φ−1)a+d^2(1+2φ^2)−1=0

  a=(−1−2√10+4√2+√5)/6=.0947279

  b=(−1+√10−5√2+√5)/6=-.445454

  L=(−1+√10+√2+√5)/6=.96876

  L^3=(2+7√10+5√2+8√5)/54=.909177

  1/L^3=1.0999

となって,約1割大きくできることがわかります.

 実際,

  d^3(15+7√5)/4/L^3=0.469712

となって,正十二面体についてのクロフトの結果と一致しました.

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【3】正十二面体に外接する最小の立方体

 [1,1,1]方向からみて点心図配置にすれば,少し小さい容器に収まる様子を掲げます.

 以上で正多面体の最小余白問題は解決しました.もう一つの問題は最小工程問題です.工程的に無駄なプロセスを省こうとする工夫が最小工程問題なのですが,適切な工程で行えば最小の費用(時間とコスト)の下で得られるべき立体の体積を最大にすることができるようになり作業能率は向上します.このような意味から,最小工程問題は最小余白問題と同時に取り組まれるべきものと考えられますが,最小工程問題についてはまた別の機会に取り組みたいと思います.

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