(その1)では凸24面体は凹60面体にはぴったりはまりこむことを紹介しました.これより黄金比三角多面体と白銀比三角多面体には相互補完的な関係にあることはがわかりました.黄金と白銀は対比されるばかりでこれまで接点が論じられたことがなかったように思われますから,金原博昭さんのユニークなアイディアの賜物といってよいでしょう.ひょっとすると初めての発見かもしれません.
今回のコラムでは菱形十二面体のα化(α:√2→φ)と菱形三十面体のβ化(β:φ→√2)を行い,二面角δの変化を調べてみることにします.
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【1】二面角関数
立方体の二面角はπ/2(cosδ6=0,δ6=90°)ですが,他の正多面体については
正四面体 → cosδ4=1/3,δ4=70.5288°
正八面体 → cosδ8=−1/3,δ8=109.471°
正十二面体 → cosδ12=(1−φ^2)/(1+φ^2)=−√5/5,tanδ12=−2,δ12=116.565°
正二十面体 → cosδ20=(1−φ^4)/(1+φ^4)=−√5/3,sinδ20=2/3,δ20=138.19°
と計算されます.正四面体と正八面体の二面角は互いに補角をなすというわけです.
凸24面体の二面角関数は
tanδ8=−2√2
tanθ=(3/α^2−1)^1/2
として,
convexδ24=δ8+2θ
それに対して,凹60面体の二面角関数は
tanδ20=−2/√5
tanθ=(3/β^2−1)^1/2
として,
concaveδ60=2π−δ20−2θ
で与えられます.
α=φ,β=√2のとき
tan(δ8+2θ)=tan(2π−δ20+2θ)=2(√5−√2)/3
すなわち,二面角は151.281°となって,両者は完全に一致します.
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【2】二面角関数のグラフ
convexδ24(緑),concaveδ60(黄)のグラフを描いてみると,交点があることがわかります.
この交点は
arctan(−2√2)+2arctan(3/α^2−1)^1/2=2π−arctan(−2/√5)−2arctan(3/β^2−1)^1/2
にて,α=β=ωとおいて
4arctan(3/ω^2−1)^1/2=2π−arctan(−2√2)−arctan(−2/√5)=2π−arctan(2(√5+√2)/3)
より求めることができます.
解は
ω=1.52811
このとき二面角は
arctan(−2√2)+2arctan(3/ω^2−1)^1/2
=2π−arctan(−2/√5)−2arctan(3/ω^2−1)^1/2
=165.641°
となります.このことは対角線の長さの比がωの菱形を用いた凸24面体,凹60面体はぴったりはまりこむことを意味しています.
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