金原博昭さんのお話によると,
[1]菱形二十面体を短い方の対角線で白銀化すると凸40面体ができますが,菱形十二面体(第2種)を短い方の対角線で白銀化しても凸24面体にはならず凸22面体になる,菱形二十面体を長い方の対角線で白銀化しても凹40面体にはならず凹30面体になり,菱形十二面体(第2種)を長い方の対角線で白銀化しても凹24面体にはならず凹22面体になるのだそうです.
すなわち,菱形二十面体と菱形十二面体(第2種)の白銀化では二面角の平角化が起こり,鋭角三角形2枚あるいは鈍角三角形2枚が同一平面(菱形のまま)になるのですが,菱形二十面体を短い方の対角線で白銀化した場合のみ平角化が起こらないことは不思議に感じられます.
[2]凸24面体は凹60面体にはぴったりはまりこむのに対して,凸60面体の凸部は凹24面体にははまりこみません.しかし,菱形二十面体を短い方の対角線で白銀化した凸40面体と菱形十二面体(第2種)を短い方の対角線で白銀化した凸22面体は両方とも凹24面体にはまりこむ,また,凸24面体は菱形二十面体を長い方の対角線で白銀化した凹30面体にもはまりこむが,菱形十二面体(第2種)を長い方の対角線で白銀化した凹22面体にははまりこまないそうです.
今回のコラムでは,菱形二十面体と菱形十二面体(第2種)の白銀化についての問題を提起してみます.
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【1】問題提起(形が一意に決まらない!)
白銀化した菱形二十面体と菱形十二面体(第2種)は白銀化した菱形三十面体からあるゾーン(三角形の連なった帯)を抜き取って押しつぶすとできるように思えますが,そうではありません.[1]からわかるように平行移動するだけでは噛み合わず,平面化しなければならない箇所もでてきます.
合同な二等辺三角形を組み合わせて多面体を作ることを考えてみましょう.実際は1枚1枚貼り合わせるのではなく,多面体の展開図を描き,閉じた面にするために周辺だけを貼り合わせます.多面体は凸とは限らないものとします.
その際,多面体の頂点の位置は面の形によって一意に決まるものではありません.たとえば,同じ長さの辺をもつ体積の異なる多面体の例として,屋根(あるいは床)付きのダンボール箱があげられます.出っ張った屋根を中に押し込めば辺の長さは変わらないのに体積はかなり小さくなります.これは2つの安定した形状をとる多面体の例として日常的によく見られるものでしょう.同様に,正20面体のひとつの頂点を押さえてへこませた形も成立します.
そうなると菱形二十面体と菱形十二面体(第2種)の白銀化の問題では頂点にかかる力の和=0,トルク(回転モーメント)の和=0となる力学的な釣り合いを考えなければならないことになります.しかし,このような物理的条件を要請せずとも,面の形だけで多面体の形が一意に決まる幾何学的条件の範囲内で多面体の頂点の位置を決定したいものです.
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【2】雑感
多面体の紙模型は作りやすいのですが,素材の柔らかさゆえの欠点もあります.たとえば,平面上にない4点であっても5°くらいの歪みであればなんとか平面を貼れてしまうのです.紙模型ではこれくらいの工作誤差はつきものであって,1°以内の精度は望むべくもなく,観察者の見た目には平面のように映っても仕方のないものと思われます.
いまのところ,面の形だけで多面体の形が一意に決まるための条件はわかりませんが,金原さんの模型を実際に観察してから,再検討してみたいと思います.
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