■フィボナッチ数列の母関数(その3)
フィボナッチ数列の母関数は
ΣFnx^n=x/(1−x−x^2)=
と表されるのですが,
(1−x−x^2)=(1−φx)(1+x/φ)
より,
ΣFnx^n=x/(1−φx)−x/(1+x/φ)
=xΣ{(φx)^k−(−x/φ)^k)
こうして,
Fn=1/√5{φ^n−(−1/φ)^n}
が得られる.
初項1,第2項1から始まり,隣り合う2項の和が次の項となるフィボナッチ数列
1,1,2,3,5,8,・・・
の生成規則は,Fn =Fn-1 +Fn-2 で,一般項は
Fn =1/√5[{(1+√5)/2}^n−{(1−√5)/2}^n ]
=1/√5{φ^n−(−1/φ)^n}
(F0 =0)
と黄金比φを使って表すことができます.
この式は1765年にオイラーが初めて発表したものですが,みんなに忘れられていてそれを再発見したビネにちなんでビネの公式(1843年)と命名されています.整数の数列に無理数である√5や黄金比φ,1/φが出現する不思議に驚かれた経験をお持ちの方の少なくないでしょう.nが大きくなるほど{(1−√5)/2}^nは0に近づきますから,この項を無視するとフィボナッチ数列は黄金比を公比とする等比数列に次第に近づくことになります.
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この数列にフィボナッチ(13世紀のイタリアの数学者でピサのレオナルドとしても知られる)の名を冠したのはフランスの数学者リュカで,ハノイの塔の名で知られる2進法のパズルも1883年にリュカによって考案されたものです. 初項1,第2項3のフィボナッチ数列
1,3,4,7,11,18,・・・
は彼にちなんでリュカ数列と呼ばれています(1877年).リュカ数列の一般項Ln は,
Ln ={(1+√5)/2}^n+{(1−√5)/2}^n}
={φ^n+(−1/φ)^n}
(L0 =2:φ=(1+√5)/2)
で表され,Ln =Fn-1 +Fn+1 の関係があります.リュカ数列はフィボナッチ数列と同じ漸化式をもち,連続する2つの項の比は黄金比に近づきます.
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