■エンゲルの空間充填38面体(その5)

 一般のn次元空間における鏡映変換は

  β−cα,c=2(β,α)/(α,α)

で与えられる.鏡映とは折り返しのことであるが,n次元空間の平行移動も回転運動も高々n+1個の鏡映の積として表すことができることが証明されている.今回のコラムでは,エンゲルの38面体における立方体対称空間群を取り上げてこのことについて調べてみたい.

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【1】エンゲルの38面体における立方体対称空間群

[1](X,Y,Z)=(1/4−x,1/4−y,1/4−z)

 エンゲルの38面体の第1面は

  (X,Y,Z)=(1/4−x,1/4−y,1/4−z)

の鏡面として与えられる.

 この変換は(1/8,1/8,1/8)を中心とする180°回転移動であるから,x+y+z=3^1/3/8に関する鏡映であり,

x=1/8に関する鏡映→(X,Y,Z)=(1/4−x,y,z)

y=1/8に関する鏡映→(X,Y,Z)=(1/4−x,1/4−y,z)

z=1/8に関する鏡映→(X,Y,Z)=(1/4−x,1/4−y,1/4−z)

の3段階の鏡映の積として表すことができる.

[2](X,Y,Z)=(1/2−x,y,−z)

 第2面は

x=1/4に関する鏡映→(X,Y,Z)=(1/2−x,y,z)

z=0に関する鏡映  →(X,Y,Z)=(1/2−x,y,−z)

の2段階の鏡映の積として表すことができる.

[3](X,Y,Z)=(1/2+z,1/2+x,−1/2+y)

 第3面は

z=x−1/2に関する鏡映→(X,Y,Z)=(1/2+z,y,−1/2+x)

z=y+3/2に関する鏡映→(X,Y,Z)=(1/2+z,1/2+x,y+1)

z=1/4に関する鏡映  →(X,Y,Z)=(1/2+z,1/2+x,−1/2+y)

の3段階の鏡映の積として表すことができる.

 ここでは38面すべてについて確認することはしないが,エンゲルの38面体の設計ではコンピュータを使って1≧x≧y≧z≧0の領域内の点について鏡映変換の組み合わせを試行している.この領域は立方体[0,1]^3の1/6の鼈臑(べつどう)型空間である.

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【2】空間充填四面体

  GOLDBERG M.: the infinite families of tetrahedral space-filler, J. Combinat. Theory A16(1974), 384-354

には空間充填多面体が5種類紹介されている.それらにはSommerville No.1-4とHill, second typeと命名されている.

 一方,

  ENGEL P.: Die Typen von Wirkungsbereichspolyedern in den symmorphen kubischen Raumgruppen, Zeitschr. Kristallographie, 157(1981), 259-275

には6種類の空間充填多面体が紹介されていて,Sommerville No.1-4とHadwiger-Hill H30(0),H31(0)とある.

 空間充填四面体についてさえ,これですべてかどうかわからないのである.なお,ほとんど知られていないが,1≧x≧y≧z≧0の鼈臑(べつどう)は立方体の中心を通る平面x+y+z=3/2で2等分することができる.この図形も空間充填多面体であり,秋山仁先生によりペンタドロンと名付けられた.

 ペンタドロンは平行多面体の元素σである.

  [定理]平行多面体の元素数は1である(立方体σ12(σ96),6角柱σ144,菱形12面体σ192,長菱形12面体σ384,切頂8面体σ48).

 鼈臑(べつどう)はσ2であるが,σ2にはいくつかの空間充填異性体が存在する.

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