エンゲルの論文
ENGEL P.: Ueber Wirkungsbereichsteilungen mit kubischer Symmetrie, Zeitschr. Kristallographie, 154(1981), 199-215
の第2報
ENGEL P.: Die Typen von Wirkungsbereichspolyedern in den symmorphen kubischen Raumgruppen, Zeitschr. Kristallographie, 157(1981), 259-275
を入手.(その1)−(その3)に掲げた多面体の頂点の空間座標は,その値を1/2にしたほうがよいことがわかったのだが,それは1辺の長さが2の立方体を単位立方体に変更するだけのことであって,実害はないので訂正しないでおく.
その替わりというわけではないが,今回のコラムでは立方体対称空間群における鏡映変換について考えてみることにしたい.
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【1】平面における鏡映
直線:ax+by=cに関する鏡映により,点(x,y)が点(X,Y)に変換されたとすると,
a(X+x)/2+b(Y+y)/2=c
(X−x)/a=(Y−y)/b
より,
X=(2ac+(−a^2+b^2)x−2aby)/Δ
Y=(2bc−2abx+(a^2−b^2)y)/Δ
Δ=a^2+b^2
一般に,鏡映変換後の座標はx,yに関する2変数関数X=f(x,y),Y=g(x,y)として与えられる.これらが1変数関数となるのは,
a^2−b^2=0またはab=0→a=±b,a=0またはb=0
すなわち,直線が原点を中心とする正方形の辺や対角線に平行なときである.
1変数関数の鏡映の例としては,
y軸に関する鏡映: X=−x,Y=y
x=aに関する鏡映: X=2a−x,Y=y
y=xに関する鏡映: X=y,Y=x
y=x+aに関する鏡映: X=y−a,Y=x+a
y=−xに関する鏡映: X=−y,Y=−x
y=−x+aに関する鏡映: X=−y+a,Y=−x+a
などがあげられる.
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【2】空間における鏡映
平面:ax+by+cz=dに関する鏡映は,
a(X+x)/2+b(Y+y)/2+c(Z+z)/2=d
(X−x)/a=(Y−y)/b=(Z−z)/c
より,巡回置換になるように計算すると
X=(2ad+(−a^2+b^2+c^2)x−2aby−2acz)/Δ
Y=(2bd−2abx+(a^2−b^2+c^2)y−2bcz)/Δ
Z=(2cd−2acx−2bcy+(a^2+b^2−c^2)z)/Δ
Δ=a^2+b^2+c^2
3変数関数X=f(x,y,z),Y=g(x,y,z),Z=h(x,y,z)となったが,これらが1変数関数になるのは平面が原点を中心とする立方体の面や対角線を含む面に平行な場合と予想される.実際に求めてみよう.
[1]X=f(x),Y=g(y),Z=h(z)の場合
ab=0かつac=0かつbc=0→a=b=0またはb=c=0またはc=a=0→面に平行
[2]X=f(x),Y=h(z),Z=g(y)の場合
ab=0かつac=0かつa^2−b^2+c^2=0かつa^2+b^2−c^2=0→a=0かつb=±c→y=±z面に平行
[3]X=g(y),Y=f(x),Z=h(z)の場合
ac=0かつbc=0かつ−a^2+b^2+c^2=0かつa^2−b^2+c^2=0→c=0かつa=±b→x=±y面に平行
[4]X=g(y),Y=h(z),Z=f(x)の場合
ab=0かつac=0かつbc=0かつ−a^2+b^2+c^2=0かつa^2−b^2+c^2=0かつa^2+b^2−c^2=0→a=b=c=0
[5]X=h(z),Y=f(x),Z=g(y)の場合
ab=0かつac=0かつbc=0かつ−a^2+b^2+c^2=0かつa^2−b^2+c^2=0かつa^2+b^2−c^2=0→a=b=c=0
[6]X=h(z),Y=g(y),Z=f(x)の場合
ab=0かつbc=0かつ−a^2+b^2+c^2=0かつa^2+b^2−c^2=0→b=0かつa=±c→x=±z面に平行
以上より,9つの面に平行な場合だけのように思えるのだが,たとえば,x=1/8に関する鏡映→y=1/8に関する鏡映→z=1/8に関する鏡映の3段階によって移すと,
(X,Y,Z)=(1/4−x,1/4−y,1/4−z)
となり,±x±y±z=aに平行な鏡映も含まれることになるから,立方体対称空間群といえども複雑なものになることがわかる.
[補]一般のn次元空間における鏡映変換は
β−cα,c=2(β,α)/(α,α)
で与えられる.
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