今回のコラムでは,エンゲルの空間充填38面体(タイプ1,頂点数70,26^122^116^112^16^45^44^143^12)の木工製作を考えて,おおまかな形を設計することにした.
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【1】多面体近似
エンゲルの38面体の頂点の状況を反映するような平面による近似の問題である.大きい面を延長させて順次接続することによって,面数の少ない多面体を構成することができる.38面のうち,面1,2,8,15,18,19,20,38の8面を選んで延長させたいのだが,このような3次元図形処理では3平面の交点が多面体内部の共通領域内に存在するか否かを判別しなければならないので,かなりの手数を必要とする.
さらに,3平面の交点は1つに定まるが,4平面では4個,n平面ではn(n−1)(n−2)/6個となる.8面の場合,交点数は56にもなってしまう.多面体にすべく勝手に取った点をつないで線は引けても,面を構成するには相手を選んで線を引かねばならないし,逐次的に行くのも大変である.近似といえども一筋縄ではいかない問題であることがおわかりいただけたであろうか.
簡単に済ませるために,56個の交点が多面体内部の共通領域内に存在するか否かの判別を省略し,エンゲルの論文
ENGEL P.: Ueber Wirkungsbereichsteilungen mit kubischer Symmetrie, Zeitschr. Kristallographie, 154(1981), 199-215
に掲載されているKantengraphを利用して,面数9,頂点数13の多面体(3^34^25^37^1)を設計することにした.
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【2】交点の空間座標
交点 x y z
1 -.174425 .728712 -.533754
2 -.28129 .379554 -.756954
3 -.427051 .221011 -.761066
4 -.657609 -.263785 -.558486
5 -.678239 -.477771 -.387933
6 -.184 -.0435998 .2184
7 .426074 .39513 .720454
8 .429286 .39555 .718307
9 .316 .4564 .7184
10 .296088 .545372 .64014
11 .296088 .736548 .448964
12 -.220828 .65464 -.557372
13 .066 -.0436 -.0316
この空間座標をもとにして各面の形や各面間の二面角を計算することができる.なお,交点7と交点8は近接し,ひとつの点とみなすことができそうである.もちろん,このような図形が実際に存在しうるかどうか保証はないが概形を作るという目的を達するには十分であると思う.
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