■n次元平行多面体数(その36)

 奇妙に感じられるかもしれませんが,デルタ18面体は存在しません.このことは,1942年,フロイデンタールによって証明されたのですが,この証明は殊の外厄介で,結局は頂点数11の形を分類してあらゆる可能性を調べても凸体にならないことを確かめるという手間を要します.ともあれ,f=18(v=11)はどうしても凸にならないのです.

 また,デルタ多面体は正三角錘,正四角錘,正五角錘,正三角柱,四角反柱に分解されるのですが,デルタ12面体だけは例外です.デルタ12面体は双子の正12面体とも呼ばれてきた多面体ですが,この多面体の存在は他よりも初等的でなく,それを構成するには3次方程式の解を必要とします.

[補]この方程式は,x^2=zとおくと

  z^4−21z^3+132z^2−320z+256=0

であるが,

  (z−4)(z^3−17z^2+64z−64)=0

となって3次方程式に帰着される.ゆえにデルタ12面体は定規とコンパスによって作図可能ではない.

 デルタ多面体による空間充填は正四面体と正八面体の組み合わせがよく知られていますが,そのほかにはないのでしょうか? デルタ多面体のすべての二面角を計算して空間充填の必要条件を満たす解を探索すると(正四面体,デルタ6面体)×(正八面体)の組み合わせしかないことがわかります.デルタ6面体は正四面体を2つ貼り合わせた立体ですから,デルタ多面体による空間充填は本質的に正四面体と正八面体の組み合わせのほかにはないといえるのです.

 なお,デルタ多面体に対して,正方形のみによる凸多面体は立方体,正五角形のみによる凸多面体は正十二面体しかなく,正六角形以上の正多角形ばかりでは凸多面体はできません.結局,1種類の正多角形でできる凸多面体は合計10種類あることになります.

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