■n次元平行多面体数(その12)
【1】ケプラーの球の詰め込み問題
球の充填および接触数の問題は重要な未解決問題であるヒルベルトの第18問題として取り上げられているものですが,前者は大域的なものであり,後者は局所的な問題と考えられます.そして,半径の等しい球をn次元ユークリッド空間R^nに効率的に詰め込む問題のなかでも3次元空間の球の充填問題は「ケプラー問題」と呼ばれるものですが,この問題は1998年にトマス・ヘールズとファーグソンによって証明されました.
ガウスは球を規則正しく並べるという条件つきでケプラー予想が成り立つことを証明したのですが,不規則な並べ方まで含めてあらゆる場合に成り立つことはそう簡単には証明できないことでした.多くの場合,最密充填は整然とした格子によってもたらされるのですが,次元によっては最大接触数が一見ランダムな配置によって実現する場合もあるので問題は複雑なのです.
たとえば1〜8次元では最大接吻数は格子上で起きるのですが,9次元では格子上での最大接吻数が272であるのに対して,不規則配置では306個の球が接触できるものが知られているのですから,9次元以上になるとルート格子だけでは済まなくなるのです.
格子状配置による評価は,最終的にはグラフ的算法に帰着されるのですが,
n 1 2 3 4 5 6 7 8 9
接吻数 2 6 12 24 40 72 126 240 272
格子 A1 A2 A3 D4 D5 E6 E7 E8
1≦n≦8では,ガウス記号を用いて
下界=n([2^(n-2)/3]+n+1)
の形にまとめられます.(この式はn>8に対しては成り立ちません.n=9のとき468となるのですが,コクセターの上界401よりも大きくなってしまうからです.)また,n=24のとき,リーチ格子が唯一最密な球の詰め込みを与えることが証明されています(コーン,クマール:2004年).
ともあれ,ヘールズとファーグソンの証明により「キャノンボール・パッキングよりも密度の高い3次元パッキングは存在しない」ことになるのですが,ランダムな配置まで含めても,面心立方格子が3次元空間における最密充填構造だというケプラー予想は,400年近く経ってやっと定理に昇格したことになります.
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