(その6)では「重複部分」を除去することを考えたが,条件が足りず,構造を決定するには至らなかった.今回のコラムでは「はみ出し部分」を除去する条件を加えて再検討してみた.
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【1】面の回転
そのためにはねじれ重角錐C面を回転させる必要があるが,面をC21,C22,C31,C32,C41,C42としてそれぞれの法線ベクトルを求める.
A1=1/√3[1,1,1]
A2=1/√3[−1,1,1]
A3=1/√3[1,−1,1]
A4=1/√3[1,1,−1]
B2=d/√2[0,1,−1] B23=d/√2[1,1,0]
B3=d/√2[−1,0,1] B34=d/√2[0,1,1]
B4=d/√2[1,−1,0] B42=d/√2[1,0,1]
たとえば,C21面ではA2⊥n12,B42⊥n12,B2・n12>0より,
n21=1/√6[1,2,−1]
また,原点から平面へ引いた垂線の(符号のついた)長さc21は
P1e=[3d/2√2,3d/2√2,3d/2√2]
を通ることより
c21=√3d/2
以下同様に,
n22=1/√6[−1,1,−2],c22=√3d/2
n31=1/√6[−1,1,2],c31=√3d/2
n32=1/√6[−2,−1,1],c32=√3d/2
n41=1/√6[2,−1,1],c41=√3d/2
n42=1/√6[1,−2,−1],c42=√3d/2
はみ出し部分は3軸P2,P3,P4の2軸ずつに直交する
B23=d/√2[1,1,0]
B34=d/√2[0,1,1]
B42=d/√2[1,0,1]
であるが,ここではC21面とC42面に挟まれるB24に注目する.
P2=tA2+B2を回転対称軸とする−120°回転Q2で,C42面の法線ベクトルは
Q2・n42=1/√6[2,−1,−1]
となり,
P2s=d/√2[1,0,−2]
を通る平面に移るから,この平面はW=(x,y,z)として,
Q2・n42・W=2d/√3・・・・・・・(1)
と表すことができる.
一方,P4=tA2+B2を回転対称軸とする120°回転R4で,C21面の法線ベクトルは
R4・n21=1/√6[1,1,−2]
となり,
P4e=d/√2[2,0,−1]
を通る平面に移るから,
R4・n21・W=2d/√3・・・・・・・(2)
と表すことができる.
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【2】はみ出し部分の計算
平面(1)とP4=tA4+B4:
P4=[t/√3+d/√2,t/√3−d/√2,−t/√3]
の交点を計算すると
t=d√(3/2)・1/2
同様に,平面(2)とP2=tA2+B2:
P2=[−t/√3,t/√3+d/√2,t/√3−d/√2]
の交点は
t=−d√(3/2)・1/2
より,
|t|≦d√(3/2)・1/2
となるが,これでは明らかに削りすぎである.
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【3】雑感
ねじれ重角錐Cの面の法線ベクトルは[2,1,1]方向を向き,それを回転させても[2,1,1]方向を向いている.しかるに,森義彦先生(福島県数学教育協議会)が計算した重角錐Aとねじれ重角錐Bの面の法線ベクトルは[3,2,1]方向を向いている.
したがって,今回のコラムで示したはみ出し部分の除去法だけでは問題解決には結びつかないことになる.
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【補】超平面
aを行ベクトル,xを列ベクトルとして
a=(a1,・・・,an)
x’=(x1,・・・,xn)
また,実数をcとおくと,n次元ユークリッド空間の超平面は,
ax’=c
で表すことができます.原点を通るときc=0です.
ベクトルaを超平面の法線ベクトルと呼びます.法線ベクトルはスカラー倍を除いて一意に定まります.aをその長さ‖a‖で割ったベクトルa/‖a‖を考えると,これは長さ1の単位法線ベクトルとなります.
また,aが単位法線ベクトル,すなわち,
a1^2+a2^2+・・・+an^2=1
が成り立つとき,cは原点から超平面へ引いた垂線の(符号のついた)長さとなります.
n=1なら方程式はax=bですから,超平面は点にほかなりません.n=2ならax+by=cとなり,超平面は直線,n=3ならax+by+cz=dですから,超平面は平面を表します.3次元空間内の超平面が普通の平面だし,2次元空間内の超平面は直線ですから,n次元空間の場合,n−1次元の線形多様体を超平面というのです.
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