■素数定理とエラトステネスのふるい(その14)

 p=x^2+5y^2の場合は微妙だが,決定的な違いがある.

  6=2・3=(1+√−5)(1−√−5)

が成り立つが,2,3,(1+√−5),(1−√−5)は単数でないZ(√−5)の元の積で表すことはできないのである.

 たとえば,2=αβで,α,βが単数でなければ,4=N(2)=N(α)N(β)から,N(α)=N(β)=2でなければならないが,

  N(a+b√−5)=a^2+5b^2=2

となるa,bは存在しない.3,(1+√−5),(1−√−5)についても同様である.

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 八元整数は成分がすべて整数の数だけでは不十分で,適当に半整数(整数+1/2)も含める必要があります.

 ここで,八元整数の体系内で,除法

  α=β・γ+δ,|δ|<|β|

は可能かという問題があるのですが,ケイリー(その後何人か)が代数的に証明しようとして失敗したという逸話が伝わっています.

 それは可能なことをはじめて証明したのがコクセターです.その証明は幾何学的で,8次元空間内で正単体と正軸体をうまく組み合わせると空間充填可能になります.コクセターは八元整数全体をうまく結ぶと自然にその充填形ができることを証明し,β^-1αに最も近い八元整数γが1未満にあることを幾何学的に証明したことになります.

 なぜなら,辺の長さが1の正単体,正軸体で頂点から最も近いのはその中心で,そこまでの距離名それぞれ

  2/3<1,1/√2<1

となるからです.

 代数的に証明しようとして失敗した難問が,図形的に考えれば,ほとんど自明な事実となってしまったというわけです.

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