■ブレットシュナイダーの公式(その22)

 一般にベクトルak に同一の質量があるとき,この質点系の重心はベクトル(a1 +a2 +・・・+an )/nで表されます.三角形については,これは均質な板の重心と一致しますが,n≧4では均質な板の重心と頂点のみの質点系の重心とは一致しません.それでは,四角形の薄板の重心はどこに位置するのでしょうか.

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【1】四角形の板の重心は何処?

 四角形ABCDを対角線ACで,三角形ABCと三角形CDAに分けると△ABCの重心G1 と△CDAの重心G2 を結ぶ直線上で,各々の面積を逆比に内分する点に重心Gがあります.対角線BDで分けると△ABDの重心G3 と△BCDの重心G4 を結ぶ直線との交点が重心Gとなります.何とか式で表現できないかと考えて,次のような結果を得ました.

 重心Gの位置ベクトルをg,三角形ABCの面積を△ABC,四角形ABCDの面積を□と書くことにすると,

g={△ABC(a+b+c)+△CDA(c+d+a)}/3□・・・(1)

g={△ABD(a+b+d)+△BCD(b+c+d)}/3□・・・(2)

(1)+(2)を実行すれば

g={(2□−△BCD)a+(2□−△CDA)b+(2□−△DAB)c+(2□−△ABC)d}/6□

 =(a+b+c+d)/3−{△BCD・a+△CDA・b+△DAB・c+△ABC・d}/6□

問題はa,b,c,dに対して対称的ですから,重点の式はa,b,c,dを取り替えても変わらないものでなければなりません.ベクトルの外積を用いると△ABCは,1/2(b−a)×(c−a)=1/2(b×c+c×a+a×b)で与えられますから,gの対称式が得られます.

 四角形の重心Gを作図によって求めるためには,4辺の中点が必要になります.あるいは,四角形の各辺の3等分点をとり,隣り合った等分点を結ぶと平行四辺形ができますが,四角形の重心Gはその平行四辺形の中心と一致します.四角形の重心の作図法については,黒田俊郎「コマと重心」(数学セミナー・リーディングス「新しい高校数学の展望」(日本評論社)やコクセター「幾何学入門」(明治図書)にも記述があります.なお,3本の均一な針金でできた縁だけの三角形(いわば一次元の三角形)の重心は,三角形の各辺の中点を結んだ三角形の内心に位置します.

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