つい最近,中川宏さんは正多面体の元素となる3回割りの回転対称性をもつ7面体を木工裁断により製作されたばかりである.そこで,森義彦先生(福島県数学教育協議会)の紙模型を参考に中川さんに空間充填18面体の木工模型の製作をお願いすることにした.もし空間充填18面体を作れるとすれば彼以外には考えられないからである.
空間充填18面体の木工製作にとりかかる前に,中川さんは面白い副産物を発見してくれた.今回のコラムではそれを紹介することにした.
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【1】大星形菱形12面体
4軸構造を円柱や六角柱で作ると隙間ができてしまうことから,中川さんは三角柱12本で構成することを試みた.すると,以下の写真のような星形多面体になった.
コラム「星と雪月花」に掲げた菱形十二面体の星形化を小星形菱形12面体と呼ぶことにすると,これは大星形菱形12面体と呼べるものである.前者が四角柱6本で構成されるのに対して,後者は三角柱12本で構成される.
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【2】雑感
周期的4軸構造に対応するのが空間充填18面体であるが,f=18,n=4とすると
f=6(n−1)
の関係が成り立つ.一般のn軸構造にもこの式が適用できるかどうかはわからないが,n軸構造が解明できればf≧39なる空間充填多面体が発見できるかもしれない.
産総研の手嶋吉法先生から窺った話では,1つの軸が残りのn−1本の軸となす角が等しいという意味で対称性をもつのは最大6方向までで,n=1,2,3,4,6に限られるのだそうである.したがって,7軸以上に対しては対称的な空間充填多面体にはならないと考えられる.エンゲルの空間充填38面体も非対称に違いないのだが,論文が入手でき次第紹介したいと思う.
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