コラム「奇数ゼータと杉岡の公式(その26)」において,杉岡幹生氏の問題を紹介した.その問題とは
Σk^2sin(kx)/{exp(2πk)-1}=g(x)
Σk^3sin(kx)/{exp(2πk)-1}=g(x)
なる関数g(x)を閉じた形に表せというものである.
コラム「ラマヌジャンの和」で示したように,この級数は超幾何級数ではないので閉じた形に表すことはできないが,g(x)に関係する定積分値なら求めることができそうである.
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【1】Σk^2sin(kx)/{exp(2πk)-1}=g(x)
杉岡氏のフーリエシステムから得られた計算結果は
Σk/{exp(2πk)-1}=1/π∫(-π,π)g(x)(π-x)/2dx
であるが,g(x)は奇関数であるから,
Σk/{exp(2πk)-1}=-1/π∫(0,π)xg(x)dx
となる.
左辺は既知のラマヌジャン和
Σn/{exp(2πn)-1}=1/24-1/8π
になっている.したがって,定積分値
∫(0,π)xg(x)dx=1/8-π/24
が求められる.
それでは定積分値∫(0,π)g(x)dxはどのように表されるのだろうか? まず,
Σk^2cos(kx)/{exp(2πk)-1}=f(x)
Σk^2sin(kx)/{exp(2πk)-1}=g(x)
とおく.すると
f(x)+ig(x)=Σk^2exp(ikx)/{exp(2πk)-1}
となる.
∫(0,π){f(x)+ig(x)}dx=Σk^2/{exp(2πk)-1}∫(0,π)exp(ikx)dx
=Σk^2/{exp(2πk)-1}[exp(ikπ)-1]/ik
ここで,1/i=−iより
∫(0,π){f(x)+ig(x)}dx=-iΣk/{exp(2πk)-1}[exp(ikπ)-1]
この定積分は
kが奇数のとき → 2iΣk/{exp(2πk)-1}
kが偶数のとき → 0
であるから,実部と虚部を比較することにより
∫(0,π)g(x)dx=2Σk/{exp(2πk)-1} (kは奇数をわたる)
∫(0,π)f(x)dx=0
となる.
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【2】Σk^3sin(kx)/{exp(2πk)-1}=g(x)
杉岡氏の計算結果は
Σk^2/{exp(2πk)-1}=1/π∫(-π,π)g(x)(π-x)/2dx
であるが,g(x)は奇関数であるから,
Σk^2/{exp(2πk)-1}=-1/π∫(0,π)xg(x)dx
となる.しかし,左辺は未知であり定積分値は求められない.
次に,定積分値∫(0,π)g(x)については
Σk^3cos(kx)/{exp(2πk)-1}=f(x)
Σk^3sin(kx)/{exp(2πk)-1}=g(x)
とおくと
f(x)+ig(x)=Σk^3exp(ikx)/{exp(2πk)-1}
となる.
∫(0,π){f(x)+ig(x)}dx=Σk^3/{exp(2πk)-1}∫(0,π)exp(ikx)dx
=Σk^3/{exp(2πk)-1}[exp(ikπ)-1]/ik
=-iΣk^2/{exp(2πk)-1}[exp(ikπ)-1]
この定積分は
kが奇数のとき → 2iΣk^2/{exp(2πk)-1}
kが偶数のとき → 0
であるから,実部と虚部を比較することにより
∫(0,π)g(x)dx=2Σk^2/{exp(2πk)-1} (kは奇数をわたる)
∫(0,π)f(x)dx=0
となる.
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