コラム「常温核融合とFCC核モデル」で紹介したノーマン・クック氏のFCC核モデルを端的に表現するならば,全核子数Aが
A=2Σk(k+1)=2n(n+1)(n+2)/3
=4,16,40,80,140,224,・・・
の魔法的安定性を予言する核モデルということになる.
A=4,16,40,80,140,224,・・・
が魔法的安定核のマジックナンバーであり,陽子数Z=中性子数Nの場合,
He,O,Ca,Zr,Yb,Xx,・・・
がそれに対応する元素である.
百聞は一見にしかず,FCC核モデルを3次元デカルト空間の中で視覚化してみたい.そこで,中川宏さんにFCC核モデルの木工模型の製作をお願いすることにした.中川さんのお仕事がたてこんでいるため,今回のコラムでは完成品でなく,試作品を掲載する.
===================================
【1】ポリオクテット構造のFCC核モデル
FCC核モデルは正四面体と正八面体を組み合わたポリオクテット構造である.層にするためには正八面体を2等分しなければならないが,全体としては切頂四面体と正八面体の中間の八面体(正三角形4面と六角形4面からなる)になる.
===================================
【2】層状構造のFCC核モデル
FCC核モデルを2n+1層構造として作る場合,北半球の各層の上面にはk(k+1)個,下面には(k+1)(k+2)個の核子が入ることになる.南半球では東西南北が逆になって,上面に(k+2)(k+1)個,下面に(k+1)k個,中間の赤道部の上面には(n+1)(n+2)個,下面には(n+2)(n+1)個の核子が入る.すなわち,
1×2,2×3,3×4,4×5,・・・,5×4,4×3,3×2,2×1
のように層が重なっている.
また,半球部の二面角は54.7356°,70.5288°,109.471°,赤道部の二面角は54.7356°,70.5288°,125.264°と計算される.70.5288°は正四面体の二面角,109.471°はマラルディの角(cosθ=−1/3)である.54.7356°と125.264°は補角をなし,FCC核モデル全体としては正三角形4面と六角形4面からなる八面体になることがわかる.
立方体に正四面体を内接させることができることは最初ケプラーによって指摘されたらしいが,これがイメージできれば1辺の長さが√2の正四面体の対辺間距離が1になることは計算しなくても求められることである.したがって,核子間距離を2とすると,各層の厚さは√2と計算される.なお,立方体には立方体の中心に関して対称な2つの正四面体を内接させることができ,それらの和集合はケプラーの八角星であり,積集合は正八面体となる.
===================================
【3】殻状構造のFCC核モデル
層状構造のFCC核モデルを作る場合はこれでよいが,中心に正四面体をおいた殻状構造のFCC核モデルを作るには,層ごとに長軸方向を直交させる必要がある.したがって,各層を短軸で2等分してそれを切稜して交互に積み重ねることになる.
===================================