■φ形式の算法(その7)
【1】フィボナッチ数列
初項1,第2項1から始まり,隣り合う2項の和が次の項となる数列
1,1,2,3,5,8,・・・
をフィボナッチ数列とよびます.
その一般項Fn は,Fn =Fn-1 +Fn-2 で
Fn =1/√5[{(1+√5)/2}^n−{(1−√5)/2}^n]
=1/√5{φ^n−(−1/φ)^n}
(F0 =0:φ=(1+√5)/2)
と表すことができます.
この式は1765年にオイラーが初めて発表したものですが,みんなに忘れられていてそれを再発見したビネにちなんでビネの公式(1843年)と命名されています.整数の数列に無理数である√5や黄金比φが出現する不思議に驚かれた経験をお持ちの方の少なくないでしょう.nが大きくなるほど{(1−√5)/2}n は0に近づきますから,この項を無視するとフィボナッチ数列は黄金比を公比とする等比数列に次第に近づくことになります.
また,フィボナッチ数列の各項はパスカルの三角形の対角線上の数の和に一致しています.この他にもフィボナッチ数は多くの性質をもっていて,以下にいくつか紹介しておきます.
Fn ・Fn+2 =Fn+1^2−(−1)^n
F1 +F2 +F3 +・・・+Fn =Fn+2 −1
F1 +F3 +F5 +・・・+F2n-1=F2n
F2 +F4 +F6 +・・・+F2n=F2n+1−1
F12+F22+F32+・・・+Fn2=Fn ・Fn+1
有名な幾何学的パラドックス<64cm^2=65cm^2>は,「不思議の国のアリス」の作者であるルイス・キャロルが創ったとも,パズルの大御所であるサム・ロイドが創ったともいわれているパズルです.きっと,いろいろな本でみたことのある方も多いと思います.このトリックは一直線をなすように使われた2つの線分の傾き3/8,5/13の相違がわれわれの視力の限界外となる錯覚を利用したもので,もっと先の数,たとえば8/21とかを使えばより巧妙なトリックになります.公式Fn ・Fn+2 =Fn+1^2−(−1)^n は,3つ並んだフィボナッチ数の真ん中の数の平方は前後の2つの数の積より1大きいか小さいかのどちらかで,このトリックパズルのもとになっています.
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【2】リュカ数列
この数列にフィボナッチ(13世紀のイタリアの数学者でピサのレオナルドとしても知られる)の名を冠したのはフランスの数学者リュカで,ハノイの塔の名で知られる2進法のパズルも1883年にリュカによって考案されたものです.
初項1,第2項3のフィボナッチ数列
1,3,4,7,11,18,・・・
は彼にちなんでリュカ数列と呼ばれています(1877年).リュカ数列の一般項Ln は,
Ln ={(1+√5)/2}^n+{(1−√5)/2}^n
={φ^n+(−1/φ)^n}
(L0 =2:φ=(1+√5)/2)
で表され,Ln =Fn-1 +Fn+1 の関係があります.リュカ数列はフィボナッチ数列と同じ漸化式をもち,連続する2つの項の比は黄金比に近づきます.
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