平行移動するだけで3次元空間を埋めつくすことのできる多面体はよく知られているが,平行移動のほかに回転や鏡映操作も許せば,さらに多くの多面体が空間充填可能となる.ちなみに現在は4≦f≦38であるすべてのfに対し,空間充填可能な凸f面体が存在することが判明している.
いま空間充填18面体を木工製作中であるが,非平行移動空間充填多面体の問題は大変難しい.そこで今回のコラムでは次元をひとつ下げて,非平行移動平面充填多角形について考えてみることにしたい.
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【1】問題の設定
平面の敷きつめは平行移動,回転,折り返しの3種類の操作で行いますが,四角形(凸でなくてもよい)の場合,どんな形の四角形でも平面を敷きつめることができます.
任意の凸四角形は平行移動と回転操作で敷きつめられますが,四角形の敷きつめ方の見方を変えて,2つ合わせた形の平行六辺形を単位としてみると平行移動だけによる敷きつめとみなすことができます.凹四角形の場合も同様です.
(その1)では正三角形と直角二等辺三角形の斜辺でない辺を接合した非対称四角形タイル(45°,60°,105°,150°)で平面を充填しましたが,その際,同じ形のタイルを使って正12角形の対称性を保持したまま回転,折り返し操作でどこまでも平面を埋め尽くすことができました.
平行移動は最も自然な操作で,回転や折り返しは技巧を要する敷きつめですが,平行移動によらない敷きつめの可能な非対称四角形は他にはないものでしょうか?
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【2】正三角形との組み合わせ
ところで,基本的な三角形のタイル貼りというと正三角形,直角二等辺三角形,(30°,60°,90°)の三角形の3種類があげられます
正三角形との組み合わせで考えられる非対称タイル貼りは
(1)正三角形と直角二等辺三角形の斜辺でない辺を接合したタイル(45°,60°,105°,150°)
(2)正三角形と(30°,60°,90°)の斜辺を接合した台形タイル(60°,90°,90°,120°)
(3)正三角形と(30°,60°,90°)の斜辺でない辺を接合したタイル(30°,60°,120°,150°),(60°,60°,105°,150°)
の4種類ということになります.
これらのうち,(1)では3辺の長さが等しいので,平行移動によらない敷きつめに適しています.実際,(1)では105°の隙間を何通りかの仕方でうまく埋めることができ,正12角形(内角150°)の対称性を保持したまま回転,折り返し操作でどこまでも平面を埋め尽くすことができるのです.それに対して,(2)(3)では非対称四角形の2辺の長さが等しいだけなので平行移動によらない敷き詰めができません.
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【3】直角二等辺三角形と(30°,60°,90°)の組み合わせ
これらの組み合わせで考えられる非対称タイル貼りは
(1)直角二等辺三角形の斜辺に(30°,60°,90°)を接合したタイル3種類
(2)直角二等辺正三角形の斜辺でない辺に(30°,60°,90°)を接合したタイル3種類
の計6種類です.
(2)では4辺の長さがそれぞれ異なるので,平行移動によらない敷き詰めはできそうにありません.(1)であっても2辺の長さが等しいだけなので平行移動によらない敷き詰めはできません.
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【4】まとめ
結局,平行移動によらない面白い敷き詰めができるためには辺の長さが等しいことが最も重要な因子のようです.非平行移動空間充填多面体の場合,立体を構成する表面(面の大きさと形)が等しいことが要求されますが,いま木工製作中の空間充填18面体でも面は四角形面と八角形面の2種類だけです.
今回検討した四角形タイルで平行移動によらない面白い敷き詰めができたのは,正三角形と直角二等辺三角形の斜辺でない辺を接合した非対称四角形タイル(45°,60°,105°,150°)だけでしたが,ペンローズタイルもこれに加えることができます.
敷き詰め問題では整然とした周期的なもの,雑然とした非周期的なもののほかに,規則的であるが非周期的なものが知られています.その代表例がペンローズタイルで,正十角形を構成する2種類の菱形(72°,108°),(36°,144°)によるものや凧形(72°,72°,72°,144°)と矢形(36°,36°,72°,216°)によるものが示されています.
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