■パズルワールド散策(その16)

 投影図形ではなくシルエットの話だから黒く塗りつぶすが,上から見ると●,前から見ると▲,横から見ると■にみえる空間図形のことはご存知と思われる.

 先日,仙台で開催された「形の科学会」に参加したところ,京都大学の立木秀樹先生が類似の問題

 (Q1)正面図,平面図,側面図とも同じ■にみえる空間図形は何か?

を提出された.ただし,これを45°回転した形◆は除外するとのことである.

 等軸系の結晶では(1,0,0)で表される立方体と並んで基本的な図形は,(1,1,1)で表される正八面体,(1,1,0)で表される菱形十二面体であるが,この制約条件により正八面体や菱形十二面体は含まれないことになる.

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 もちろん立方体はひとつの答えであるが,立方体の12の辺上のすべてに頂点があればいいわけで,答えは立方体以外にも無数にある.そこで,答えとなる空間図形をもう少し制限して,

 (Q2)頂点が立方体の頂点ないし辺の中点にあるものは何種類あるか?

というのが立木先生の次なる問題である.

 今回のコラムではこの答えを受け売りで紹介するが,結論を先にいうと,15通り(鏡像を区別すると16通り)ある.対称性が高くきれいな多面体に見える解としては,立方八面体や重六角錐があげられる.正四面体はもとの面が残らない唯一の解で,凸な体積最小解となっている.

 これらの解の展開図は立木先生のホームページ

  http://www.i.h.kyouto-u.ac.jp/~tsuiki

からダウンロードできるので,数学教材として是非試していただきたい.

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[雑感]

 (Q2)正面図,平面図,側面図とも同じ■にみえる空間図形は何か?

という問題設定によって,切頂立方体系の空間図形はすべて網羅されたことになると思うが,これを45°回転した形◆を除外する必要なないだろう.

 (Q3)正面図,平面図,側面図とも同じ◆にみえる空間図形は何か?

によって,切稜立方体系の空間図形を調べてみるのも面白いだろう.

 立方体のすべての辺上に頂点があるという条件が,立方体のすべての面上に頂点がある=正八面体のすべての頂点上に頂点があるという条件に置き換わってしまうから,凸な体積最小解は正八面体になるが,正八面体と菱形12面体の間に何種類あるかは試みる価値があると思われる.

 正八面体や菱形十二面体はその答えであるが,菱形12面体の3価の頂点を切頂したものも解であるから,答えは無数にある.そこで,菱形12面体の3価の頂点を頂点,それに隣接する4価の頂点を底面とする正三角錐を切り取ることとして,切頂する頂点の選び方は2^8通り.回転群の位数は4!通りであるが,回転の軸となる北極・南極の選び方は3通りあるから,4!/3=8=2^3で割って2^8/2^3=2^5=32通りになるものと考えられる.

 なお,立方体に正四面体を内接させることができることは最初ケプラーによって指摘されたとのことである.立方体には立方体の中心に関して対称な2つの正四面体を内接させることができ,それらの和集合はケプラーの八角星であり,積集合は正八面体となる.

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