今回のコラムでは「3角形の面積の2等分線」を取り上げる.まず,正三角形の面積を2等分する線の問題である.正三角形の1辺の長さを1とする(面積√3/4).底辺に垂直な線で2等分すると垂線の長さは√3/2=0.866025・・・となる.
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【Q1】底辺と平行な線で切って,面積を2等分するにはどこで切ればよいか.
(A1)水平線の長さxとすると
√3/2x^2=√3/4 x=√2/2
したがって,水平線の長さは√2/2=0.707107・・・となり垂線の長さ√3/2よりこの方が短い.
正三角形の場合に限らず,3角形の中線は面積を2等分する.1辺に平行で他の2辺を(√2−1):1で内分する線分も3角形の面積の2等分線となる.
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【Q2】正三角形を直線によって面積を2等分するとき,その包絡線はどのような曲線を描くか?
(A2)包絡線の求め方を説明しよう.曲線:y=f(x,θ)において,パラメータθが動くとき,θとθ+Δθに対応する2本の隣り合った曲線を考えると,その交点はΔθ→0の極限で包絡線上の点となる.
xを固定するとき,この交点のy座標はパラメータθが変わっても変化しないことで特徴づけられるから,
∂y/∂θ=0 → θ=g(x)
を求め,元の方程式に代入すると包絡線の方程式
y=f(x,g(x))
が得られる.
△ABCにおいて,A(0,√3),B(−1,0),C(1,0)とする.
点Pがx軸上を点Bから原点に向かって進むとき,点Pは
(t,0) −1≦t≦0
とパラメトライズされる.
このとき,正3角形の面積の2等分線のもう一方の端点Q(x0,y0)は辺AC上にあり,
y0=−√3x0+√3
また,直線PQの方程式を
y=m(x−t),m=y0/(x0−t)
とする.面積の2等分線であることより
(1−t)y0=√3
以上より,この直線の方程式は
y=m(x−t),m=√3/(t^2−2t)
となる.
∂y/∂t=0 → t^2−2xt+2x=0
t=x−(x^2−2x)^1/2
これを,元の方程式に代入すると包絡線の方程式
y=√3(2(x^2−2x)^1/2+2x−1)/(1−4x)
→ −4xy−2x+y−1=2√3(x^2−2x)^1/2
→ (4xy+2x−y+1)^2=12(x^2−2x)
こうして4次曲線が得られる.(双曲線と書かれてある本もあったが,2次曲線には退化しない.)正三角形の場合に限らず,三角形を直線によって面積を2等分するとき,その包絡線は小さい三角状の曲線になることがボールにより示されている(1980年).1:1から比率を変えると弧が分離したような形になり,その領域は比率を変えるにつれて大きくなり,3角形そのものに近づいていく.
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(Q1)の水平線は最短の2等分直線であるが,2等分曲線にはもっと短いものがある.
【Q3】正三角形を最短長の曲線で2等分せよ.
(A3)正三角形を次々に辺について反転させて1頂点のまわりに6個集めて正六角形を作る(面積3√3/2).そして,六角形の中心を中心とする円でこの面積を2等分する.円の半径をxとすると
πx^2=3√3/4
x=(3√3/4π)^(1/2)=0.643037・・・
したがって,円弧の長さは
π/3(3√3/4π)^(1/2)=0.673387・・・
となり,このほうが短いことがわかる.
モーザーはこのようにして最短周長曲線は円弧であることを示した.等分曲線がどのような形であろうと正三角形を次々に辺について反転させて1頂点のまわりに6個集めて正六角形を作れば2等分曲線は閉曲線になるから,円が与えられた面積を囲む最短周長曲線であるというわけである.
ところで,正三角形ではなく一般の三角形の場合はどうなるのだろうか?
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