■パズルワールド散策(その14)

 ルービック・キューブは1980年から1981年にかけて世界中で大流行した.それでは3×3×3のルービック・キューブではいったいいくつの色の組み合わせが作れるだろうか?

 12!×2^12×8!×3^8通り.しかし,これはルービック・キューブを分解したときの話であって,面の回転だけで実現可能な色の組み合わせの総数は12!×2^12×8!×3^8/12通りになる.

 今日の数学者が群論を説明するためにルービック・キューブを使うように,今回のコラムでは組み合わせ論,有限数学(離散数学)のパズルを集めてみた.

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【1】タングラム

 タングラムとは,正方形を直線で7枚の板(直角二等辺三角形大2,中1,小2,正方形1,平行四辺形1)に切って,それを組み合わせていろいろな図形を作るパズルである.

[Q]タングラムの7枚を全部並べてできる凸多角形は何種類あるか?

[A]この問題は三角形1,四角形6,五角形2,六角形4の計13種類あることが証明されている.ラッキー・パズルでは四角形4,五角形3,六角形6,八角形1の14種類作れることは確かであるが,それですべてかどうかは証明されていない.挑戦してみませんか?

 タングラムは中国生まれとされるが,わが国でもよく似たものがあり,長方形を7枚の板(直角二等辺三角形2,直角台形大1,中1,小2,ホームベース型五角形1)に切った「ラッキー・パズル」が市販されている.

 私も子供の頃,ラッキー・パズル(はなやま玩具)でよく遊んだものである.影絵が簡単なほど難しくなるが,幼児であれば自分自身で新しい影絵を考案して楽しむこともできる.実際,わが家の子供達は専らデザインを応募しては採用されることを楽しんでいるようである.

 ところで,「九章算術」の立方体,塹堵(ぜんと),陽馬,鼈臑(べつどう)はピースを並べ替えて等積変形により立体の体積を求積するもので,三角錐や角錐台の体積公式を得るときなどに用いられる.その意味で「タングラム」の立体版と考えられる.もちろんタングラムと同じ中国生まれである.

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【2】アルキメデスのストマキオン

 ピース数をタングラムの2倍の14片とし,14片を並べ替えて正方形にする知恵の板がアルキメデスのストマキオンである.ストマキオンとは腹痛の意味で,腹が痛くなるほど解くのが難しいパズルなのである.

[Q]14片のピースを組み合わせて,正方形に並べる方法はいく通りあるか

[A]14片で何通りの正方形が作れるかというと,実に17152通りの作り方があるという.

 アルキメデスのストマキオンは「パリンプセスト」に収蔵されている.どうしても見劣りがし,だれも気に留めない論文であるが,アルキメデスは与えられた問題に対して可能な解がいくつあるかを計算しようとしていたのではないかと考えられている.古代の組み合わせ論,有限数学(離散数学)というわけである.

[補]グノーモンについて

 「ユークリッド原論」第2巻に収蔵されているグノーモンについて,阪本ひろむ氏曰く,『グノーモン関連の定理は「幾何学的な代数論」であるととか,いろいろな説(謎)がある.しかし,私が読んで感じのは「つまらない」の一言につきる.「ユークリッド原論」の代数あるいは数論には、「素数は無限に存在する」「ユークリッドの互除法」「√2は有理数ではない」「ピタゴラスの定理」など,非常に貴重で,しかも証明が美しい定理があるのに,なぜこんな議論を「原論」に収録したのだろうか?』

[文献1]ユークリッド原論の翻訳

[1] 中村幸四郎ほか約 ユークリッド原論 昭和46年 共立出版

ギリシア語からの翻訳

  縮刷版も存在

  平行を//といった数学記号を一切使っていない

  原典にある図形は,そのまま掲示

[2] T.Heath 13 Books of Euclud(全2巻か3巻)

  イギリスの碩学による翻訳

  ユークリッドの使わなかった数学記号を使っている

  ソフトカバーのものは入手しやすい

[文献2]数学史

[3] T.L.Hearth A History of Greek Mathematics(2 Vol.)

決定版かな?

[4] T.L.Heath A.Manual of Greek Mathematics (2.Vol.)

[3]の簡略版

[5] 平田他訳 ギリシア数学史 共立出版 1998年(復刻版)

[4]の邦訳

[6] 斉藤憲 ユークリッド「原論」の成立 1997年

  東大出版会

[7] Van Del Wearden 数学の黎明 みすず書房 

  ユークリッド原論の各巻についての解説をふくむ

以上が関連文献である.

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【3】ペントミノ

 ペントミノは12種類あり,12種類のピースを長方形の箱に収めるパズルである.

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 複雑な形

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を早めに箱に入れて,単純な形を後に残すことがコツだそうである.

 下の写真は12ピースを6×10の長方形の箱に戻した例であるが,解は1通りではない.

[Q]ペントミノ12ピースを5×12,4×15,3×20の長方形の箱に戻すことは可能か?

[A]6×10の箱に12ピースを収める組み合わせ数は2339通り,5×12では2010通り,4×15では368通り,3×20では2通りある.

2×30,1×60は不可能である.

[Q]ペントミノ12ピースを全部使い,順々につないで輪を作る.ただし,輪はもとの正方形の辺と辺で繋がっていなくてはならないものとする.できるだけ面積の広い輪を作れ

[A]面積128のものが何通りか知られている.面積が129以上のものは存在しないことが証明されている.

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【4】立体ペントミノ

 ペントミノの正方形を立方体に置き換えた立体ペントミノを12ピース組み合わせて直方体を作る問題を考える.おもしろいことに3×4×5の直方体を作ることができる例がたくさん知られている.3×4×5の組み方は3940通りあるという.たとえば,

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【5】もうひとつのペントミノ問題

(Q)ペントミノ1個と10個のトロミノ

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を5×7の長方形に箱詰めせよ.

 12種類のペントミノの各々に対して少なくとも3つの配置があるが,

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に対する解は3つしかない.

(Q)6つのペントミノ

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を6×7の長方形に(隙間を許すことにして)箱詰めせよ.

 ペントミノの各辺を水平垂直に置く通常の方法では箱詰めできない.そこで,ペントミノを斜めに置くことにする.

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