(その4)ではレムニスケート弧長の2等分
sl(u/2)=(-1+√2)^1/2=0.643594
と4等分
sl(u/4)=(-c+(2c)^1/2+(2d+3d/c^1/2)^1/2)^1/2=0.327379
(c=1+√2,d=c^2-1)
を示しましたが,さらにファニャーノはレムニスケート弧長の3等分あるいは5等分を与える代数方程式を導いています.
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【1】レムニスケートサインのn倍角公式
レムニスケートサインの加法定理
sl(u+v)=(sl(u)sl'(v)+sl(v)sl'(u))/(1+sl^2(u)sl^2(v))
より,
sl(2u)=2sl(u)sl'(u)/(1+sl^4(u))
sl(3u)=(sl(2u)sl'(u)+sl(u)sl'(2u))/(1+sl^2(2u)sl^2(u))
sl(4u)=(sl(3u)sl'(u)+sl(u)sl'(3u))/(1+sl^2(3u)sl^2(u))
sl(5u)=(sl(4u)sl'(u)+sl(u)sl'(4u))/(1+sl^2(4u)sl^2(u))
sl(6u)=(sl(5u)sl'(u)+sl(u)sl'(5u))/(1+sl^2(5u)sl^2(u))
また,
sl'(u)=(1-sl^4(u))^1/2
sl'(2u)=(1-sl^4(2u))^1/2
sl'(3u)=(1-sl^4(3u))^1/2
sl'(4u)=(1-sl^4(4u))^1/2
sl'(5u)=(1-sl^4(5u))^1/2
を用いて,sl(u)の関数として表すと
sl(2u)=2sl(u)(1-sl^4(u))^1/2/(1+sl^4(u))
などが得られます.
しかし,sl(nu),n≧3をsl(u)の関数として表すことは大層複雑であって,手計算を断念せざるを得ませんでした.そこで,畏友・阪本ひろむ氏にお願いしてMathematicaで展開してもらったところ,言葉が一切入らない数式が数ページにもおよびました.
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【2】レムニスケート弧長のn等分
レムニスケート弧長のn等分点を求めるには,sl(nu)=1として方程式を解いてsl(u)の値を求めることになるのですが,そうなると手計算では到底太刀打ちできません.以下,阪本ひろむ氏の計算結果を記すことにします.
[1]n=2,n=3
Mathematicaでは,2等分点
sl(u/2)=(-1+√2)^1/2=0.643594
と3等分点
sl(u/3)=1/2(1-(√2)(3)^1/4+√3)=0.435421
は簡単に求まりました.どちらも平方根だけを含む式なので幾何学的に作図できることがわかります.
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[2]n=4
n≧4ではsl(nu)=sl((n-1)u+u)=1とすると方程式を解いている途中でメモリ不足になってしまいました.
しかし,(その4)で求めた方法,すなわち,4等分
sl(4u)=(sl(3u)sl'(u)+sl(u)sl'(3u))/(1+sl^2(3u)sl^2(u))=1
でなく,2等分を2回繰り返す方法
sl(2u)=2sl(u)(1-sl^4(u))^1/2/(1+sl^4(u))=(-1+√2)^1/2
を用いると手計算でも可能であることがわかっています.
そこで,Mathematicaでもこの方法で計算すると4等分点
sl(u/4)=(-c+(2c)^1/2+(2d+3d/c^1/2)^1/2)^1/2=0.327379
(c=1+√2,d=c^2-1)
が得られました.
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[3]n=5
ファニャーノは倍角公式,4倍角公式によって得られるものに置き換えて,レムニスケート弧長の3等分あるいは5等分を与える代数方程式を導いています.すなわち,
sl(3u)=sl(2u+u)
sl(5u)=sl(4u+u)
しかし,Mathematicaでは5等分点の計算でもメモリ不足になってしまいました.sl(5u)=sl(4u+u)=1をsl(5u)=sl(3u+2u)=1と分割の仕方を変えて計算したのですが,メモリ不足はsl(5u)の展開ではなく,sl(5u)=1の方程式を解くところでおきているので,どうしても5等分点は得られませんでした.
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[4]n=6
6等分
sl(6u)=(sl(5u)sl'(u)+sl(u)sl'(5u))/(1+sl^2(5u)sl^2(u))=1
でなく,2等分したものを3等分する方法
sl(3u)=(-1+√2)^1/2
を用いれば6等分解が得られると思われたのですが,プログラムエラーが起こり解は得られませんでした.この障害の原因についてはMathematicaの代理店に問い合わせ中です.
一方,3等分したものを2等分する方法
sl(2u)=1/2(1-(√2)(3)^1/4+√3)
では手計算でも(もちろんMathematicaでも)計算できて,
a^2v^8+4v^6+2a^2v^4-4v^2+a^2=0,a=1/2(1-(√2)(3)^1/4+√3)
(v^4+1/v^4)+4/a^2(v^2-1/v^2)+2=0
v^2-1/v^2=wとおくと,
w^2+4/a^2w+4=0よりw=-2/a^2・(1+(1-a^4)^1/2)=b
より,v=((b+√(b^2+4))/2)^1/2=0.218456
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[5]n=8
sl(2u)=sl(u/4)=(-c+(2c)^1/2+(2d+3d/c^1/2)^1/2)^1/2=0.327379
をsl(u)について解くと,sl(u)=0.163865.よって,sl(u/8)=0.163865
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【3】雑感
ベルヌーイのレムニスケートの方程式は
(x^2+y^2)^2=x^2−y^2
ですから,
y^2=1/2(−2x^2−1+(8x^2+1)^1/2)
5等分点は得られませんでしたが,
(x,y)
n=2 → (0.643594,0.352505)
n=3 → (0.435421,0.321899)
n=4 → (0.327379,0.272504)
n=6 → (0.218456,0.200059)
n=8 → (0.163865,0.155696)
が得られたので,とりあえず一歩前進です.
[注]この計算には誤りがあります.(その9)で訂正しています.
Mathematica 手計算
n=2 → 0.643594 ○ ○
n=3 → 0.435421 ○ ×
n=4 → 0.327379 ○ ○
n=5 × ×
n=6 → 0.218456 ○ ×
n=8 → 0.163865 ○ ○
n=5については要再考です.
なお,ファニャーノはレムニスケート弧長の2等分を与える
dt/(1-t^4)^(1/2)=2・dw/(1-w^4)^(1/2)
t^2=4w^2(1-w^4)/(1+w^4)^2
を見いだしましたが,同時に複素数による楕円積分の例
dt/(1-t^4)^(1/2)=(1+i)・dw/(1-w^4)^(1/2)
t^2=2iw^2/(1-w^4)
sl((1+i)u)=(1+i)sl(u)/(1-sl^4(u))^1/2
も得ています.
z=x+yiにおいて,y=0〜y=cの範囲の積分値を求めたい場合,
dz = dx+idy
ですから,その経路ではdz=idy.したがって,
∫(x+0i,x+ci)F(x+yi)idy
=iG(x+ci)-iG(x+0i)
のように虚数部分が関係してきます.このidyのiはしばしば忘れられがちです.
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