■ペンタドロン(自然界のレゴ・ブロック,その3)
ケプラーが雪の結晶はなぜ六角形であるのかと考えたのは1611年のことであった.六角形は,たとえば蜂の巣など現実世界で非常によく見られる.そして,その構成原理は六角充填の効率性と関連しているというものであった.
ケプラーといえば,惑星の運行法則で有名であるが,天文サイズばかりでなく,ミクロな世界にまで注目し「神のなせる業」を見いだそうとしていたのである.
六角形(平行多角形)は2次元充填問題で面白い役割を果たしているのであるが,3次元充填問題のレゴ・ブロックはたった5種類−−立方体,6角柱,菱形12面体,長菱形12面体,切頂8面体−−しかない.これらは「平行多面体」と総称される.
とりわけ,菱形12面体と切頂8面体はそれぞれ面心立方格子(FCC),体心立方格子(BCC)のボロノイ領域であることはよく知られている.ここで村の鍛冶屋を考えてみよう.鉄を熱しておいてそれをハンマーでたたく,すなわち,高エネルギー下で変形を加えるのである.そのとき,ミクロの世界では何が起こるかというと,金属結晶の相転移現象が生起される.相転移では,結晶格子といえども不変骨格たり得ず,それに対応するボロノイ領域は菱形12面体から切頂8面体に再編さればければならない.
このことから,菱形12面体と切頂8面体の間を仲介する多面体が存在するはずと考えるのは自然な発想であろう.ペンタドロンは「結晶と幾何学の繋がり」のポイントとなる多面体なのである.
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