■三角数と四角数のパズル(その2)

 正の整数は3つの三角数の和あるいは4つの四角数の和として表される・・・.一般に「m角数定理」とは「すべての自然数はたかだかm個のm角数で表せる」というものです.

 この定理でm=3の場合がガウスの定理「n=△+△+△」,m=4の場合がラグランジュの定理「n=□+□+□+□」に相当します.m=5の場合が五角数定理「n=☆+☆+☆+☆+☆」の相当するわけですが,フェルマーが遺して後世を悩ましていたこの命題は,オイラー,ラグランジュ,ルジャンドルなどの研究を経て,1813年,コーシーが証明しセンセーションを巻き起こしました.

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【1】ラグランジュの定理

 任意の整数nは,n個平方和

  n=1^2+1^2+・・・+1^2

に書けますから,これをなるべく少ない数の平方和でnを表そうと思うのは自然な発想です.そこでまず,簡単な数値実験から始めることにしましょう.1から10までの整数をいくつかの平方数の和の形式で表現するというものです.

 整数の平方

  0,1,4,9,16,25,・・・

は非常にまばらにしか存在しませんが,2つの平方数の和の形で表される整数はより頻繁に現れます.1,2,4,5,8,9,10,・・・

  1=1^2+0^2

  2=1^2+1^2

  4=2^2+0^2

  5=2^2+1^2

  8=2^2+2^2

  9=3^2+0^2

 10=3^2+1^2

 ここで,3,6,7といった整数は,2つの平方の和では書けないことがわかります.しかし,3つの平方和となると幾分間隙を埋めてくれます.

  3=1^2+1^2+1^2

  6=2^2+1^2+1^2

 それでも,なおすべての正の整数を得ることはできません.最後まで残った7に対しては3つの平方数の和で書けず,4つの平方数が必要となります.

  7=2^2+1^2+1^2+1^2

 このような数値実験からいくつかのことが予想され,肯定的に証明されています.

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[1]フェルマー・オイラーの定理(2平方和定理)

 特別な素数である2を除外して,素数は4で割ると余りが1になるもの(5,13,17,29,37,41,・・・)と3になるもの(3,7,11,19,23,31,・・・)の2種類に分けられます.

 このうち,4n+1の形の素数は2つの整数の平方の和として表されます.たとえば,5=1^2+2^2,13=2^2+3^2,17=1^2+4^2,29=2^2+5^2

 しかし,4n+3の形の素数は1つもこのようには表せないのです.この定理はフェルマーの定理と呼ばれ,フェルマーは無限降下法でこれを証明しましたが,その証明は不十分で,100年後のオイラーによって完全な証明がなされています.

 それでは,どのような自然数mが2つの平方数の和の形に書くことができるのでしょうか? 2つの平方数の和になる数m=4n+3はありません.mの素因数分解におけるp=4n+3の形のすべての素因数の指数が偶数であるときに限り,2つの平方数の和の形に表すことができるのです.

(補)自然数nが2つの平方数の和であるための必要十分条件は

  「nを素因数分解したとき,4k+3の形の素数が偶数乗で現れる」ことである.

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[2]ガウス・ルジャンドルの定理(3平方和定理)

 4n+3の形の数は2個の平方数の和で表せませんが,同様にして,

  「8n+7の形の数は3個の平方数の和では表されない.」

 逆にいうと,n≠4^k(8n+7)はnが高々3個の平方数で表されるための必要十分条件です.ガウスの定理ともルジャンドルの定理とも呼ばれますが,ルジャンドルは2次形式ax^2+by^2+cz^2の研究を通して,より一般的な3元2次形式論として,この結果を得ています. 

(補)自然数nが3つの平方数の和であるための必要十分条件は

  「nが4^n(8k+7)の形でない」ことである.

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[3]ラグランジュの定理(4平方和定理)

 前述の数値実験から「すべての正の整数は,g個の平方数の和として表すことができるだろうか? さらに,gの最小値はいくつであろうか?」というより高度な問題が派生しますが,「すべての正の整数は高々4個の整数の平方和で表される」というのが,ラグランジュの定理です.

 驚くべきことに,7のみならず,任意の自然数がたった4つの平方数の和の形に表せるのです.

  7=2^2+1^2+1^2+1^2

  2=1^2+1^2+0^2+0^2

このことを,シンボリックに書くと

  n=□+□+□+□

となります.□は平方数の意味です.

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【2】ガウスの三角数定理

  「どの正整数も3つの3角数の和として表される.」

 ガウスは1796年の日記に「わかった! n=△+△+△」と書いていますが,それはすべての整数は3つの3角数の和によって表しうるという意味です.ガウスの発見は8n+3の形をしたすべての整数を3つの奇数の平方の和として表せることを意味していて,3平方和定理「8n+7の形の自然数は3つの平方数の和では表せない」を用いると「n=△+△+△」を簡単に示すことができます.ガウスはフェルマーの主張のひとつを証明したことになります.

(証明)4^m(8k+7)でない奇数は3平方和で表せますから,任意の自然数nに対して8n+3=x^2+y^2+z^2と書けます.このとき,x=2p+1,y=2q+1,z=2r+1とおくと

  n=p(p+1)/2+q(q+1)/2+r(r+1)/2=△+△+△

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【3】ルジャンドルの4平方和定理

 ラグランジュの4平方和定理では0も含めて考えていますが,「正」という条件を付けてみることにすると,

 「4つの正の平方数の和として表されない正の整数をすべてあげると

1,3,5,9,11,17,29,41,2×4^m,6×4^m,14×4^m」

が得られます(ルジャンドルの4平方和定理).

 ルジャンドルの3平方和定理は,どのような数が4つの正の平方数の和として表されるか否かを決定するというわけです.

(証明)8k+3の形をした数は3つの奇数の平方の和として表せることは前述したとおりですが,

  8k+3の形の数から4^2を引くと → 8k+3の形の数

となることからも,3つの平方数の和として表すことができることがわかります.

 同様に

  8k+6の形の数から4^2を引くと → 8k+6の形の数

ことから,8k+3と8k+6の形をした数は,2つの平方数の和としては表すことができない→3つの平方数の和として表されなければなりません.また,その数の4倍を考えれば32k+12と32k+24も3つの平方数の和として表されます.

  8k+2の形の数から2^2を引くと → 8k+6の形の数

  8k+3の形の数から4^2を引くと → 8k+3の形の数

  8k+4の形の数から1^2を引くと → 8k+3の形の数

  8k+6の形の数から4^2を引くと → 8k+6の形の数

  8k+7の形の数から2^2を引くと → 8k+3の形の数

  8k+1の形の数から1^2,3^2,5^5,7^2を引くと → 32k+24の形の数

  8k+5の形の数から1^2,3^2,5^5,7^2を引くと → 32k+12の形の数

 したがって,49よりも大きく8の倍数でない任意の整数は4つの正の平方数の和として表されることがわかります.49までの8の倍数でない数について1,2,3,5,6,9,11,14,17,29,41が4つの正の平方数の和として表されないことを確認します.

  1=1^2           11=3^2+1^2+1^2

  2=1^2+1^2        14=3^2+2^2+1^2

  3=1^2+1^2+1^2     17=3^2+2^2+2^2

  5=2^2+1^2        29=4^2+3^2+2^2

  6=2^2+1^2+1^2     41=6^2+2^2+1^2

  9=2^2+2^2+1^2

 あとは,8kの形をした数が4つの正の平方数の和として表される場合について考察します.4つの平方数のうち奇数が0個(または1個または2個または3個または4個)ならば,和は4k(または4k+1または4k+2または4k+3または8k+4)の形をしています.たとえば,

  (2p+1)^2+(2q+1)^2+(2r+1)^2+(2s+1)^2

 =4p(p+1)+4q(q+1)+4r(r+1)+4s(s+1)

 =8k+4

 したがって,8kの形をした数が4つの平方数の和として表されるならば,その4つの正の平方数はすべて偶数でなければなりませんから,2kが4つの正の平方数の和として表されるときに限られます.

  (2p)^2+(2q)^2+(2r)^2+(2s)^2=8k

  p^2+q^2+r^2+s^2=2k

ここで,2kが8の倍数であればさらに4で割って,2kは8の倍数でないとすることができますから,前述の場合に帰着されます.

 すなわち,8の倍数でない2k(偶数)が4つの正の平方数の和として表されないのは

  2k=2,6,14

したがって,2,6,14といった整数の4倍

  8k=2×4^m,6×4^m,14×4^m

は4つの正の平方数の和として書けないことがわかります.

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【4】ルジャンドルの4平方和定理の拡張

 何種類かの4変数2次形式,たとえば,

  x^2+y^2+z^2+mw^2   (m=1,2,3,4,5,6,7)

はすべての正の整数を表現することができます.

(証明)ある数を表現しないと仮定すると,3平方和定理によりその数は8k+7の形でなければなりません.そのような数から,

  mw^2  (w=1,1,2,1,1,1,2)

を引くと,それぞれ8k+6,8k+5,8k+3,8k+3,8k+2,8k+1,8k+3の形の数となり,これらはすべてx^2+y^2+z^2の形に表現されます.

 なお,変数の数を任意とする正定値2次形式(たとえば,a^2+2b^2+5c^2+5d^2+15e^2)が

  1,2,3,5,6,7,10,14,15

の15までのなかでこれら9つの数を表現するならば,その2次形式はすべての正整数を表現することが知られています.この定理はルジャンドルの4平方和定理も内包しています.

 しかしながら,ルジャンドルの定理のように3変数2次形式

  [x,y,z][a,h,g][x]=n

         [h,b,f][y]

         [g,f,c][z]

では表現できないような数が必ず存在します.

 たとえば,

  F(x,y,z)=x^2+2y^2+yz+4z^2

は1から30までの整数をすべて表しますが,31を表すことはできません(32は表すことができる).

 ここではオイラーの素数生成式(n^2+n+41はnが0から39まですべて素数を与える)のようにうまい具合にいっている3変数2次形式を掲げましたが,正定値3変数2次形式はどれもある整数を表わすことができないのです.

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